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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「甲子園でも見たかった…」取材記者も嘆く、地方大会敗戦チームでも輝いたプロ注目の「高校生ドラフト候補」5人<野手編>
posted2023/07/31 11:02
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
佐々木麟太郎の花巻東高、真鍋慧の広陵高、佐倉侠史朗の九州国際大付高、横山聖哉の上田西高に、百崎蒼生の東海大熊本星翔高――左右の超高校級スラッガーたちが集う今夏の甲子園。
今から心躍る顔ぶれが並ぶが、いやいや、決して彼らだけじゃない。
各地の予選で、すでに高校野球生活にピリオドを打った、打たれた球児たちの中にも、どうしても甲子園でそのプレーを見たかった打者たち、野手たちがいた。(全2回/投手編へ)。
【1】山形中央(山形)・武田陸玖内野手「鈴木誠也並みの大飛球」
この春、センバツの後に行われた侍ジャパン高校日本代表候補の合宿で、馬淵史郎代表監督(明徳義塾高監督)が誉めたことで、一気に報道されてしまったが、山形中央高(山形)・武田陸玖内野手(3年・174cm75kg・左投左打)は、私の最大の「隠し玉」だった。
その合宿のおよそ1年前、春の山形県大会で、当時2年生だった武田一塁手のバッティング技術に目を奪われた。
日大山形戦の4打席で、すべてジャストミート。難しい膝元のスライダーを、一塁に火の出るようなライナーで弾き返すと、タイムリーの欲しい場面で初球にカウントを取りに来る球を狙いすまして、ライナーでレフト前に。
センター左に持っていった3打席目では、ためらわずに二塁を奪って俊足を披露すると、次の打席で、高めの速球にちょっと詰まり気味の左中間のフライの上がった高さのすごいこと。現カブスの鈴木誠也の二松学舎大附高時代、高々と上がったフライの滞空時間が6秒台だったが、おそらく匹敵する高さだろう。
打ったから言うんじゃない。山形中央・武田陸玖は「打つまで」が素晴らしい。柔らかく力みなくタイミングをとりながら、しっかりとトップを作れて懐が深く、どのコースにもバリエーション豊かなスイング軌道を作れる。つまり、どこにきてもバットの芯を合わせられるハンドリングの持ち主。1キロ近いバットを、割りばしのように扱える。天才的なバッターに見えていた。
今季は投手としても奮闘しているようだったが、「再会は甲子園で!」と勝手にこだわって、結局この夏の「接点」を逸してしまった。見るのなら、甲子園で全国レベルの投手たちに立ち向かう姿だけを見たいと願ったバットマンだった。