「リングまでは距離にして20m強ほど。この日の有明アリーナの客席照明は青色だったのですが、写真全体に青味がからないよう調整しながらの撮影でした」

©Takuya Sugiyama

「写真を通して肉体の凄さも伝えられたら」

　そして先述の通り、凄まじいスピードで繰り出されるモンスターのパンチの数々。杉山はあえてカメラの最大連写数からは抑えた設定で、決定的な瞬間を待っていた。

「動きを追う、というのとは少し違います。間に合いませんから（笑）。ある程度“動きの先読み”を行いながら、タイミングを合わせるイメージです。結局一枚しか撮れないんですよ、良いシーンっていうのは」

©Takuya Sugiyama

　ボクシング専門ではなく、さまざまなスポーツの現場を撮影してきたからこそ、杉山には井上の凄さについて感じるところがある。

「上半身が露わになった状態で行われるボクシングの試合だからこそ、写真を通して肉体の凄さも伝えられたらと。井上選手ならば、試合で筋肉だけを狙う撮影もやってみたいですね。冷静ながら胸に闘志を秘めて闘う、井上選手はまさにアスリートだと思います」

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