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寺地拳四朗がアザだらけに…なぜここまで苦しんだ? セコンドが明かすカニサレス戦“薄氷の防衛”のウラ側「最後の2ラウンドは賭けだった」
posted2024/01/25 17:02
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBA・WBC世界ライトフライ級タイトルマッチが1月23日、エディオンアリーナ大阪第1競技場で行われ、王者の寺地拳四朗(BMB)がWBA1位の挑戦者カルロス・カニサレス(ベネズエラ)に2-0判定勝ち、WBAは3度目、WBCは4度目の防衛に成功した。絶対有利と思われた寺地があわや王座陥落という薄氷の勝利。盤石の2団体王者はなぜここまで苦しんだのだろうか――。
アザだらけの顔で言葉を絞り出し…
顔にいくつものアザを作った寺地が、疲れ切った表情で言葉を絞り出した。
「タフで強くて技術もすごかった。ホントに強かった。僕もいっぱいいっぱいで、必死で戦いました」
試合直後の記者会見である。寺地はWBC王座を8度防衛し、一度は王座陥落したものの、ダイレクトリマッチで矢吹正道(LUSH緑)にリベンジしてタイトル奪回。その後は京口紘人(ワタナベ)との2団体統一戦に勝利し、王者第1期とはスタイルを変えた攻撃的ボクシングで4連続KOをマークしていた。今回も相手は元王者のカニサレスとはいえ、寺地有利の予想は動かなかったのである。
もちろんカニサレスが与しやすい相手でないことは分かっていた。2016年に田口良一に挑戦してドロー、WBA王座決定戦で小西伶弥を退け、防衛戦では元世界王者の木村翔を空転させた。対日本人無敗という戦績は侮れないものがあった。
立ち上がり、カニサレスが思ったよりも攻撃的に出てきたのは想像の範囲内だっただろうか。カニサレスは好戦的な田口、小西、木村に対してはフットワークを巧みに使い、相手の攻撃をうまく外してジャブからポイントを稼ぐ、頭脳的で嫌らしいボクシングをしていたからだ。ところが寺地に対しては自ら仕掛け、打ち終わりに左フック、右フックを強振。寺地はバックステップでこれをかわしながら、得意の右ボディを打ち込む。アグレッシブに攻めたカニサレスが初回のポイントをおさえた。