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フルトンも不意を突かれた井上尚弥の右ストレートを激写…“パンチを予見するカメラマン”が明かす決定的瞬間のウラ側「追撃の左フックも超人的」
text by
福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2023/07/28 17:05
8ラウンド、スティーブン・フルトンをダウンに追い込んだ井上尚弥の右ストレート。リングサイドで同写真を撮影した福田直樹氏に話を聞いた
「判定勝ち」さえ想像できない井上尚弥の凄まじさ
今回はドネア戦やバトラー戦にもまして、海外からの反響が大きかったですね。国外の依頼だけでも、トップランク社、WBC、WBOはもちろん、ESPN、米国の『リングマガジン』と『ファイトニュース』、英国の『ボクシングニュース』……。オフィシャルとして撮影していたトップランク社には試合の1時間後、『ボクシングニュース』には2時間後には写真を納品しなければいけなかったので、個人的には少し大変でしたが(笑)。世界中のメディアがボクシングのトップニュースとして報じていたように、本当に価値のある素晴らしい試合だったと思います。
今後はWBAとIBFのベルトを持つマーロン・タパレス選手との4団体統一戦が既定路線なのでしょうが、スーパーバンタム級で井上選手が負けるところはちょっと想像できません。いや、負けどころか「判定勝ち」のイメージさえも浮かばないですね。バンタム級でニアミスしたジョンリール・カシメロ、さらにルイス・ネリといった強豪もいますが、もっともタフな2団体王者を倒し切ってしまった以上、この階級でKOできないことがあるのだろうか、というのが正直なところです。
スーパーバンタム級初戦でこれだけ強いのだから、見ている側としては「フェザー級でも……」と安直に思ってしまいますよね(笑)。ただ、ウェイトを上げるのは決して簡単なことではない。すぐに「上の階級へ」というのは気が早いですし、勝ったばかりのチャンピオンに失礼でしょう。もちろん、同日に同門の清水聡選手にTKO勝ちしたロベイシ・ラミレス選手(WBO世界フェザー級王者)との対戦がもし実現するようなことがあれば、ドラマチックな一戦になると思います。
階級を上げても、「井上尚弥の底」はまったく見えていない。パッキャオのように、むしろさらに強くなっているように思えます。これだけ世界中から注目を集める圧倒的な選手を日本で撮影できるのは、僥倖というしかありません。7月29日(現地時間)にラスベガスで行われるエロール・スペンス・ジュニアとテレンス・クロフォードのウェルター級4団体統一戦の内容と結果次第ですが、井上選手がふたたびパウンド・フォー・パウンドの1位に輝く可能性も十分あるのではないでしょうか。
(構成/曹宇鉉)
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