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フルトンも不意を突かれた井上尚弥の右ストレートを激写…“パンチを予見するカメラマン”が明かす決定的瞬間のウラ側「追撃の左フックも超人的」
posted2023/07/28 17:05
text by
福田直樹Naoki Fukuda
photograph by
Naoki Fukuda
意外にも減量苦を感じさせなかったフルトン
前日計量で井上選手の体を見たときに、肩まわりを中心に体の分厚さが少し増した印象を受けました。試合当日の体重は60.1kgと、バンタム級時代の59.5kgとそれほど変わりありませんでしたが、全体のバランスが非常にいい。スーパーバンタム級が適正といえる状態に仕上げてきたな、と感じました。
一方のフルトン選手ですが、意外なことに減量のダメージはまったく見られなかった。肌つやもよく、表情に余裕があり、コンディションはほぼ万全だったように思います。公開練習、公式会見と続けて撮影するなかで、体格的なこともあって「減量は大丈夫なのかな?」と少し心配していたのですが、足が細いボクサー向きの体型で、筋肉がついても見た目ほど重くならないタイプなのかもしれません。両者ともにいい状態で当日を迎えられたことに、カメラマンとしてまずホッとしました。
「中盤あたりでのKOもあるかもしれない」
井上選手は試合を通じて、左のボディストレートをキーパンチにしていました。メイウェザーなどもよく使っていましたが、相手からすれば次に何が来るか読めなくなる“イヤなパンチ”。井上選手のそれはかなり鋭く、牽制と同時にダメージもしっかりと与えていたと思います。
L字ガードから顔面へのジャブとボディへのストレートを上下に打ち分けられたことで、フルトン選手はかなり対処が難しくなったのでは。真吾トレーナーも言っていたように、井上選手はジャブの差し合いで立ち上がりから優位に立っていました。井上陣営としては、相手のスタンスが広いため「至近距離からの左ボディは打ちにくい」と考えてあの戦略を採用したのかもしれません。
1ラウンドの段階で、リングサイドから見たフルトン選手の表情には、少し動揺しているような雰囲気がありました。上下のジャブだけでなく、ガードの上からガツンと叩く右のパンチも強烈だったはず。想像以上の圧力を感じていたようにも見えたので、「中盤あたりでのKOもあるかもしれない」とイメージしながらカメラを構えていました。