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「必ず戻ってくるからな」 坂井瑠星(26歳)が“2つのダービー”の後に語ったこととは? ストイックすぎる騎手は「見ているところが高い」
posted2023/07/30 17:03
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
AFLO
170cm、50kg。武豊が17歳でデビューして以来36年間維持しているジョッキーとしての一つの理想体型を、26歳、8年目の坂井瑠星がいま同じ数字で整えている。
「武さんの身長、体重と同じだとは知りませんでした」
瑠星は正直に答えた。
「僕の場合は、デビュー時から身長は3cmぐらい伸びていますし、体重も46kgからジワっと増えてこの数字です。もちろん動きやすくて気に入っていますが、今年から競馬施行規程が変わって、レースでの負担重量が全体に1kgぐらい増えています。それに合わせてあと1kgだけ筋肉をつけようか考えているところです」
爽やかな風貌は少年っぽさを十分に残しているのに、もっともっとと進化を目指している。彼の頭の中には、すでに騎手としての自分の完成図が描けているのではないか。そう思えるほどに貪欲で、しかも考え方に無駄がない。周辺取材でも「競馬に対してはどこまでもストイック」という声が聞こえてくるのも納得。大袈裟を承知で言わせてもらえば、大谷翔平の野球への取り組み方と同質のものを筆者は感じている。
師匠「真面目で一生懸命。見ているところが高い」
瑠星の父は大井競馬の元騎手で、新鋭調教師として早くも頭角を現している坂井英光。競馬が身近な環境で育ち、「小学生のうちに迷いなく騎手になろうと思った」ところも武豊と同じだ。
いまや世界で最も有名な日本人調教師である矢作芳人の門下に入ることができたのは、矢作の父和人が大井競馬の調教師だったからという流れ。しかし、瑠星少年のまっすぐな目が矢作の琴線に触れたことの方が大きかったはずだ。厳しい師匠からも「真面目で一生懸命。見ているところが高いし、弟子として申し分ない」と高い評価を引き出している。
デビュー2年目に、その師匠の勧めを受け入れてオーストラリアに海外修行に出たのも、いまのスタイルを形作る重要な経験になった。
「早朝から15頭前後の調教に乗って、それから語学学校の授業を4時間受けるという毎日でした。レースでの騎乗にはなかなか繋がらなくて悔しい気持ちにもなりましたが、充実していましたね」