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「フルトンの鼻血は“命取り”だった」“井上尚弥を最も苦しめた男”が見た、敗者の異変「井上くんに完敗でもフルトンは称賛されるべき」
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byNaoki Fukuda
posted2023/07/26 20:30
スーパーバンタム級転向初戦で2団体王者フルトンを沈めた井上尚弥。8ラウンドTKO勝ち直前のシーン
「最初のダウンの時点で、試合が終わっていてもおかしくなかったですね。残り30秒を切っているような状況であれば、続行しても良かったでしょうが、井上くんのパンチ力を考えたら、フルトンが深刻なダメージを負ってしまいますから、守ってあげなければ」
ファイトが再開されてから、14秒間で井上が放ったパンチは22発。青コーナーに詰められ、滅多打ちにされるフルトンをレフェリーが救った。公式KOタイムは、8回1分14秒。
「KOは時間の問題でしたが、フィニッシュの仕方も恰好良かったですね。ただ単に、ファン目線でそう感じました。
自分が採点するとしたら、第5ラウンドはひょっとしたらフルトンが取ったかな……というくらいで、7ラウンドまで井上くんのフルマークでも全く異論は無いですね。本当に強いです」
「敗者フルトンの評価は下がっていない」
田口は、無冠となって日本を去るフルトンについても論じた。
「フルトンは確かに2本のベルトを失いましたが、今の井上尚弥と戦うだけで、称賛に値しますよ。彼は自身の評価を何一つ下げていないんじゃないですか。パウンド・フォー・パウンド1位とも言われる井上くんと、ああいうファイトが出来た。フルトンは、井上尚弥に過去一番パンチを当てさせなかった選手なんです。トップ選手である証ですよ。
フルトンは知名度と価値を上げ、今後のファイトマネーにも影響したりするんじゃないかな。今回の1敗を、次に繋げられるように感じますね」
田口は井上戦の敗北を肥やしとして後にWBA世界ライトフライ級王座に就き、同タイトルを7度防衛した。IBF同級チャンプとの統一戦にも勝利した田口は、自らの経験からフルトンに温かい眼差しを送る。
「井上くんはフェザー級王者にもKO勝ちする」
WBC/WBO新スーパーバンタム級チャンピオンとなった井上尚弥は、次戦でWBA/IBF同級タイトルを保持するマーロン・タパレスとの4冠戦を希望する。