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秋広優人20歳が大覚醒! 坂本勇人の離脱中に本塁打量産のホープが巨人・後半戦のカギを握る「ホームランにこだわりはないですね」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2023/07/24 11:05
7月に入って4戦連発を含む6本塁打を量産している巨人の秋広優人
こうなってくるともちろん相手バッテリーも警戒してくる。そうそう早いカウントから甘い球もこなくなるが、打てる球に対してバットを強く振る準備ができているから甘い球を打ち損じなくなる。DeNA戦で放った2本の本塁打は、まさにそんな打撃だった。
7月22日の1本目は2対2の同点で迎えた8回に飛び出した決勝2ラン。カウント3ボール1ストライクから、伊勢大夢投手のインハイ148㎞のストレートをライナーで右翼席に突き刺した。23日の2本目は3対0とリードした7回、ボール3から山﨑康晃投手の151㎞を弾き返したダメ押し弾だった。
「有利なカウントだったので思い切っていきました。リスクはあるけどピッチャーが1番、ストライクを入れにくるカウントだと思っていますし、そこまで(振ることに)怖さはないです」
秋広「ホームランにこだわりはないですね」
本人がこう振り返った一打で、本塁打は待望の二桁10号に到達。低めの真っ直ぐを高々と打ち上げて右中間席まで運んだ弾道と飛距離は、まさに長距離砲としての資質を証明するものだったとも言えるだろう。
「ホームランっていうのはあまりこだわりはないですね。これまで10本打てましたけど、全部狙っていたわけではない。たまたまタイミングやバットの角度が一致した結果がホームランだった。それはこれからも変えるつもりはないですし、狙うつもりもない」
狙わないでも自分のスイングさえできればスタンドまで飛んでいくというこのコメントもまた、ホームラン打者の資質を伝えるものでもあった。
「ノースリー(3ボール)から初めてじゃない?」
こう語る大久保コーチも、改めて秋広に出てきた積極性を評価する。
「あそこで振り切れる自分に持っていくのが大事。(原)監督は1打席に人生の分岐点があるって常に言っている。その分岐点を秋広はつかんでいるということでしょう」
プロ3年目。期待されながら昨年は1度も1軍昇格を果たせないままにファームで鍛えてきた20歳が、一皮も二皮も向けて巨人の3番として堂々とした結果を残している。
「2桁ホームランはプロに入ってファームでも達成したことがなかった目標でもあったので嬉しいですけど、これからも試合があるので何本を目指すとかいうより1本、1本のヒットもそうですし、(何本塁打が)目標というより1本、1本を積み重ねていければいいと思います」
こう後半戦への意気込みを秋広は語る。
長男・坂本の復活と、この末っ子の素質の本格的な開花が、巨人の後半戦の巻き返しのカギになるのは間違いないだろう。
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