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「母はコカイン中毒、父は銀行強盗犯」井上尚弥と対戦、フルトンが歩んできた“最底辺スラム”からの壮絶人生「背中の傷はトラに襲われて…」
text by
万葉了Ryo Bamba
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2023/07/24 11:01
7月25日に井上尚弥と対戦するスティーブン・フルトン。生い立ちを探ると“どん底”からの壮絶な人生の歩みがあった
フルトン・ジュニアが生まれた数カ月後。武装して銀行へ強盗に入った罪で懲役15年の判決が言い渡されたのだ。その後、ペンシルベニア州立グレーターフォード刑務所で10年間服役することとなる。
「父親を息子から引き離す時、考えられるのは、私が長い間そばにいなかったことが、息子にどのような影響を及ぼしているのかということだけだ」(米紙フィラデルフィア・インクワイアラーの取材に)
父が獄中で10年間考えていたことは、息子に欠けていた指導を与えることだった。
モスク礼拝の帰りにボクシングに出会う
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出所してから2年後のある金曜日のこと。12歳のフルトンを連れて地元のモスクへ礼拝に出向いた帰り、出会いは訪れた。地元の旧友でボクシングのトレーナー、ハムザ・ムハンマドとすれ違ったのだ。ムハンマドが教えていたチャンプス・ジムにはかつて、ミドル級主要4団体統一王者の「死刑執行人」、バーナード・ホプキンスが所属していた。
父はふとした会話から、ムハンマドが地元の子どもたちの指導を始めたことを知る。父はほどなく、息子をムハンマドのもとへ送り込んだ。
かくしてフルトンのボクシング人生が始まった。