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「井上尚弥の圧力にフルトンが萎縮するようなら…」“パンチを予見するカメラマン”が歴史的な無敗対決を展望「中盤に試合が決まる可能性も」
posted2023/07/23 17:03
text by
福田直樹Naoki Fukuda
photograph by
Naoki Fukuda
「攻略しにくいスタイル」を持つフルトン
10年ほど前には考えもしなかったことだが、いまや日本のリングが軽量級シーンの“聖地”になりつつある。かつてないレベルの名選手が揃っている上、大手の動画配信サービスが手がけるビッグイベントも年に何度か開催されてきた。以前は取り上げられる機会が少なかった日本の試合写真も、ここ数年で『リングマガジン』(米国)や『ボクシングニュース』(英国)をはじめとする海外メジャー専門誌のトップニュース、見開きに大きく掲載してもらえるようになった。
そんな現象の中心にいるのが、いうまでもなく井上尚弥だ。7月25日に東京・有明アリーナで行われるWBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチは、その井上にとって過去最大の勝負であり、いっそうの注目を世界中から集めるファイトとなるに違いない。元バンタム級4団体統一チャンピオンの井上が4階級制覇を賭け、テスト試合なしでいきなり同級最強のフルトンに挑戦するというマッチメイクがとにかく刺激的だ。しかも、両者のボクシングを比較すると、下の階級から上がってきた井上の方がむしろ有利に思えてくる。撮影前にここまでの期待感を味わえるカードは滅多にない。
もちろん、自信を持ってアウェーに乗り込んできた無敗の2団体統一王者スティーブン・フルトンは、かなり厄介な相手ではある。フィラデルフィア出身の軽量級ボクサータイプとなると、自分のような世代は1980年代に活躍したジェフ・チャンドラーを思い浮かべてしまうが、フルトンも同様に攻略しにくいスタイルを持っている。巧みなフットワーク、伸びのいいクイックジャブを備えていて、ディフェンス意識が高い。パンチ力には欠けるものの、よく言われているようにライトフライ級から上がってきた井上より体の基本的なフレームが大きい。