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藤井聡太が思わず「あ、釣られる方ですか?」…意表を突いたカメラマンからの“被り物リクエスト”「過去2年間『勝者の記念撮影』で被り物はなかった」 

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph bySPORTS NIPPON

posted2023/07/14 11:01

藤井聡太が思わず「あ、釣られる方ですか?」…意表を突いたカメラマンからの“被り物リクエスト”「過去2年間『勝者の記念撮影』で被り物はなかった」<Number Web> photograph by SPORTS NIPPON

今年の第72期ALSOK杯王将戦第5局に勝利し、3勝2敗と防衛に王手をかけた藤井。翌朝の撮影では読みが外れ、まさかの被り物をすることに

「第4局が終わって話し合って出たのは〈今までストーリー仕立てで撮ったことがない〉という意見でした」

 大田市で古くから伝統芸能として受け継がれているものといえば「石見神楽」。そこで「神楽を物語と解釈し、第5局は対局前日におふたりが並ぶ写真から終局直後、対局一夜明けまで“連続物”にする。それがスサノオノミコトとエビス様の物語だったんです」。

藤井聡太の「ヤマタノオロチ退治」

 終局直後と一夜明けを比べると……対局前日の写真はその一枚だけが話題となることはない。ただこの時は確かに石見神楽で使用する衣装と道具とともに、正座で正面を見つめる藤井と羽生の姿があった。ライトの当て方によって神秘的な1枚となった写真の翌日、第5局が始まると、羽生が切り札として挑戦者へと駆け上がった戦法「後手横歩取り」を採用した。その中でも藤井は1日目から猛攻を仕掛け、羽生の反撃を受けながらもシリーズ3勝目を挙げた。

 熱戦を制した藤井の当日の写真(翌日の紙面掲載)は、ネット上で話題となった。スサノオノミコトに扮した藤井が鮮やかな剣さばきでヤマタノオロチを退治する……というものだが、今シリーズで最も工夫を凝らしたもの。ファンの声は非常にポジティブなものだったが、河野さん、高橋雄二部長は現場で見た藤井について、こう振り返る。

「着付けなども必要な撮影だったのですが、対局直後の藤井先生は疲労が見て取れました。それだけ羽生先生との対局が激しかったという証拠ですし、自分たちの立場としては撮影するのが仕事ですが、申し訳なさを感じていました」(河野さん)

「藤井先生は当時、過密日程での対局でした。正直なところご負担をかけてしまったのでは……と今シリーズで一番反省したのですが、快く受けてくださった藤井先生の寛大さには感謝しかありません」(高橋部長)

お風呂に入ろうとする藤井先生に“バレた”…?

 そして迎えた翌日。カッコいい写真の次はコミカルな構図だった。石見神楽の演目にちなんで〈エビス様が鯛を釣り上げる〉というもの。「ウサ耳はありましたが、過去2年間で被り物はなかったので」初めて藤井に鯛の被り物をリクエストすることになった。ただ撮影前、ちょっとしたハプニングが起こったと藤山さんが回想する。

【次ページ】 テディベアのようにペタンとお座りに

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