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「羽生先生は“可愛らしいお父さん”のイメージ」あの“寝起きウサ耳姿の羽生善治”を発案した女性フォトグラファーが語る「衝撃の一枚ができるまで」
posted2023/07/14 11:02
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
SPORTS NIPPON
羽生善治「勝者の記念撮影」史
6月に日本将棋連盟の会長に就任した羽生善治九段。6月10日にオープンした「駒テラス西参道」のイベントに出席し、動画撮影やブース内で将棋ファンと触れ合ったと思えば、Twitterで自身の日常を発信するなど将棋界の第一人者として〈そこまでやってくれるのか!〉というほどファンサービスに熱心な人物として知られる。
それは王将戦恒例の「勝者の記念撮影」でも同様だ。
これまでの“代表作”を振り返ると「ウナギを手づかみして少々怯えた表情の羽生さん」「雪かきする羽生さん」「どじょうすくいコスプレする羽生さん」、さらには――今は大谷翔平がホームラン後に被っているが――2007年には「井伊家の兜を被る羽生さん」というものまであった。そして今期の王将戦第2局、大阪府高槻市で開催された一局で勝利を飾った直後には大阪府高槻市開催ということで「大阪のたこ焼き屋さん(頭にねじり鉢巻き)」、一夜明けは「バスの運転手(乗客に大量の埴輪)」である。
我々が撮影し始めたのは、およそ30年くらい前から
……羽生先生、なぜそこまでやってくれちゃうんですか? と、歓喜交じりの悲鳴が聞こえてきそうなほど協力的なわけだが、〈羽生さん全然NG出さない〉というウワサを聞いたことがある。なので王将戦主催者のスポニチ写真映像部の高橋雄二部長に聞いてみた。
「むしろ我々が心配するほどです。でも断らないどころか、むしろ楽しんでくださっている部分もあると感じます」
これには羽生と王将戦と「勝者の記念撮影」の関係があるのかも――。
あらためて羽生が王将位を獲得した期間を記すと、七冠全冠制覇を達した95年度を皮切りに6連覇を果たし、02年度に王将位を奪還、そして04~08年度には5連覇を達成している。通算12期、連続6期で大山康晴十五世名人に次ぐ歴代2位の記録だが……「我々が撮影し始めたのは、およそ30年くらい前からなんです」と高橋部長は続ける。