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藤井聡太20歳「はっきり苦しい」王座戦で八冠ロード窮地→「毒まんじゅう」サク裂…《評価値6%》から大逆転の「6四銀」はナゼすごい?
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/06/27 06:00
最年少名人となった藤井聡太七冠は、佐々木大地七段とのダブルタイトル戦と王座戦挑戦権獲得にも挑んでいる
第4図は、村田が投了してから10手後の部分局面。第3図の6筋の銀が敵陣に入り込んで詰めた。最初の王手から21手詰めだった。
藤井を追い詰めた「村田システム」も見事だった
村田六段は藤井竜王・名人を土俵際まで追い詰め、「大番狂わせの金星」まであと一歩と迫ったが惜しくも敗れた。「藤井七冠に勝つ大変さを思い知らされた」と終局後に語った。
大半の棋士がAIで研究している現状で、村田は独自の研究で「村田システム」に磨きをかけ、個性的な将棋を指している。本局の奮闘ぶりを契機として、今後も頑張ってほしいものだ。
藤井竜王・名人は本局の最終盤で逆転勝利を収めた。次の王座戦準決勝の対戦相手は羽生善治九段(52)。
羽生九段は6月9日の日本将棋連盟総会で新会長に就任した。その後、B級1組順位戦で大橋貴洸七段、王座戦準々決勝で斎藤明日斗五段に勝っている。会長と棋士の「二刀流」は好調な出だしである。羽生は今年の王将戦七番勝負で藤井に挑戦して2勝4敗で敗退したが、王座戦の一番勝負では勝機はあると思う。
藤井は八冠制覇、羽生はタイトル獲得100期へと、ともに夢をつなぐ王座戦の対局は6月28日に行われる。どちらが勝っても大きな話題になる。
棋聖戦第2局では藤井が「毒まんじゅう」を食らう形に
王座戦の藤井-村田戦から3日後の6月23日、藤井棋聖に佐々木大地七段(28)が挑戦している棋聖戦5番勝負第2局が行われた。
激闘が繰り広げられていた終盤では、藤井がずっと苦しかったが、土壇場で一瞬の好機が生じた。藤井は△7八竜と切って金を取った。▲同銀は△7五銀打以下で長手順の詰み。藤井のいつもの勝ちパターンに思えた。しかし、佐々木が切り返した▲5五角の王手を見落とし、負け筋になってしまった。藤井は本局で「毒まんじゅう」を逆に食らったのだ。
佐々木は寄せ合いを制して勝ち、棋聖戦は1勝1敗の五分となった。
7月上旬からは同一カードの王位戦(藤井王位-佐々木七段)七番勝負が始まる。藤井は佐々木とのダブルタイトル戦、王座戦の挑戦者争いと、今年の夏は「八冠」に向けて正念場を迎える。
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