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藤井聡太に3連敗を喫し号泣…出口若武が明かす、叡王挑戦の3局で起きていたこと「盤の前に座ったら頭が真っ白に」「もう少し藤井さんと指せば…」
posted2023/06/29 11:03
text by
大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
Takashi Shimizu
5つ保持するタイトルをどう防衛するか。
デビュー以来、侵攻を重ねてきた藤井聡太が、初めて経験する守備的な1年。タイトルを次々と増やして棋界の勢力図を自分色に染め上げたのが昨年度とすれば、それを維持するのが今年度の若き天才棋士の最大の使命である。その防衛ロードの4つ目にあたるのが竜王戦だ。
防衛戦は「0.5」ずつ分け合うイメージ
冠位者は敗れれば傷を負うが、挑戦者に失うものはない。次々に登場する勢いのある敵をどう迎え撃つのか。
防衛する側は負けると1が0になってしまうのでプレッシャーは避けられない。藤井はその「1」を、挑戦者と「0.5」ずつ分け合うイメージを持っているという。
自分を挑戦者と対等の立場と見ることで平常心を保とうとしている。人によって接する態度が変わらない、対戦相手によっても作戦を変えることのない藤井らしいフラットな思考法である。
現状、敵なしの藤井にとって、全冠制覇に向けて大きな壁になる年度前半の防衛戦には、実力と個性と勢いを兼ね備えた3人の挑戦者が立ちはだかった。
緑が濃くなり始める4月下旬に開幕する叡王戦が藤井の防衛戦のキックオフだった。
連勝街道を歩み挑んだ出口若武
挑戦権を獲得したのは、デビュー4年目の出口若武六段。連勝連敗タイプで調子の波が大きく、初年度は順位戦でいきなり降級点を喫したが、それでも年度勝率は6割を超えたというユニークな若者だ。その不安定さを逆にバネとして、予選、本戦ともに4連勝で一気に駆け上がってきた。まだ実績は足りないが、この大舞台で弾ける予感を抱かせた。