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栗山英樹29歳が明かしていた…“結婚も考えた”恋愛エピソード、親友に“本気で止められた”野球挑戦…WBC名将の濃すぎる国立大時代
text by
栗山英樹Hideki Kuriyama
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/06/25 11:05
WBC制覇に導いた栗山英樹。29歳時、大学時代の恋愛エピソードを綴っていた
僕らは、絶えずその女子学生についての情報を交換し合っていました。下宿はどのあたりだとか、◯✕先生の講義に出ているのを見かけたといった類いの話です。そんなやりとりがエスカレートしたのでしょう。友人の一人が、クジ引きをやって負けた者が代表してその噂の女子学生を飲みに誘うことにしようと提案したのです。
そういう時の僕はついているというか、ついていないというか、その当たりクジを見事に引いてしまったのです。しかたなく、自分とは関係ない授業に出席して、勇気をふるって空いていた彼女の隣りの席に腰かけたのです。
「スミマセン、教科書忘れちゃって。見せてもらえませんか」
というのが第一声。まるで高校生のようなアタックの仕方です。
「結婚を考えたこともあった」
でも、それがよかったのかもしれません。僕のアタックは見事、成功。一度目はみんなで飲みましたが、以後は二人きりで交際するようになったのです。後になってそれを知った時の友人たちの悔やしがるまいことか……。
「お前なら安全パイだと思ったのに……」
と、アッケにとられたような表情で、無念の思いを口にしていたものです。
その女性とは、映画に行ったり、スケートに行ったり、時には彼女の好きなクラシックのコンサートに出かけたり、といった具合に交際を続け、プロ入りして二年目を迎える頃まで交際を続けていました。実をいうと、僕はこの女性との結婚を考えたこともあったのです。
しかし、当時の僕は、野球以外のことに、時間的にも精神的にも費やす余裕がありませんでした。結果として、野球と恋愛を秤にかけて野球を選んだ形になり、話し合った末別れることにしたのです。
今思うと、僕はとても自分勝手で、一人よがりだったような気もします。でも、その時は相手を気遣う余裕が持てなかった。青春のホロ苦い体験といってしまえばそれまでかもしれませんが、あの頃を思い出すと、今でも胸が締めつけられるような思いになることがあるのも事実です。
〈つづく〉
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