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栗山英樹“じつは俳優を目指していた”高校時代…なぜ「先生を目指して国立大」に進んだのか? 本人が赤裸々に語った“30年前のエッセイ”
posted2023/06/25 11:04
text by
栗山英樹Hideki Kuriyama
photograph by
KYODO
今春のWBCで侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹。教師を目指して入学した大学時代、両親から猛反対された野球挑戦、苦悩の現役時代……若き栗山が赤裸々に綴った、自身初の書き下ろしエッセイ『栗山英樹29歳 夢を追いかけて』(池田書店)。今年5月、30年ぶりに復刊された同書から一部抜粋して掲載します。〈全3回の#1/#2、#3へ〉
悩む高校時代…「俳優になろう」
現実はなかなか思うようにはいかないものです。結局、僕は野球の名門校とはほど遠い東京学芸大学に進学するのですが、進路選択を考え始めた時点では、野球のことで頭がいっぱいだったのは事実です。
余談ですが、高校時代野球以外に面白そうだと思った職業がたった一つあります。今だからいえるのですが、それは俳優です。
これは友人の影響によるもの。高校時代、軟式テニスで活躍していた悪友の一人が、休日になると東京近郊の撮影所に出かけて、エキストラのアルバイトをやっていました。そして、翌日、撮影中に起こったスタジオでの出来事を面白おかしく、話して聞かせてくれるのです。
「女優のKは1シーンとるのにNGを30回以上繰り返してた。ホント、根っからの大根だぜ」
とか。
「昨日は五時間もフロにつかりっ放しで、体がふやけてしまった。途中でお湯がさめて、カゼをひいちゃった」
といった具合です。
根がミーハー的な部分があるのに加え、その悪友の話しぶりが面白く、撮影所での生き生きとした仕事ぶりが心地よく耳に響いてきます。それで、半ば冗談で、高校を卒業したら二人で俳優になろうと話し合ったこともありました。
その悪友はなかなかに熱心で、ここが一番の近道と、文学座に出かけて劇団員募集の案内をもらってきていたほどです。その熱心さが僕にも乗り移ったのでしょう。夏の大会が終わった後友人たちから「関取」とからかわれるほどブクブクと太った体重を、これでは「三枚目にもなれやしない」と本気でダイエットを試みたこともあるのです。