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巨人にFA決断、暴行騒動、異例だったメジャー挑戦…山口俊がいま明かす“激動のあの日”「マネーゲームをしたくなかった」
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/06/12 11:02
昨季をもって現役を引退した山口俊にインタビュー(前編)
「もう終わったことですし、僕はこれからの人生で期待を裏切らないように頑張るだけです。今、こうやってお店に立っている姿を見て、何かを感じて頂けたら嬉しいです」
巨人史上初のポスティングでメジャーに…
巨人移籍から3年後、山口は再び大決断を下す。2019年のシーズンオフのこと。それまでポスティングによるメジャー移籍を認めてこなかった巨人から、同システムによる球団史上初のメジャー移籍を目指すと発表した。プレミア12の決勝・韓国戦に登板した翌日の11月18日のことだった。
「プロ入り前からメジャーに行きたいという思いがありました。石橋貴明さんの映画『メジャーリーグ2』で初めて知って、野茂英雄さんやイチローさんを通してメジャーのすごさを明確に認識しました。なので16年のFAで色々なチームとお話しさせていただく時にも、その気持ちだけは伝えていました。その思いを巨人軍には汲み取っていただいたということです」
巨人移籍3年目だったそのシーズンは、15勝4敗、勝率.789、188奪三振と投手3部門でリーグトップ。「あの巨人からポスティングか……」という周囲の驚きの目もあり、容易な決断ではなかった。だが文句なしの結果を出した事実が、背中を押した。32歳のときだった。
「個人成績もそうですし、チームも、日本一にはなれませんでしたけど、リーグ優勝できた。自分の年齢やタイミングをいろいろ考えたときに、ずっと憧れていたメジャーでプレーするのはここがラストチャンス、という思いが自分の中にありました。これを逃したらもうないなと。それで挑戦させてもらうことに決めました」
このときはまだ、夢だったメジャー生活が“想定外の連続”になるとは思いもしなかった。
〈つづく〉