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格闘技PRESSBACK NUMBER
「シウバの身体が小さくなっている…」カメラマンがUFCで目にした“哀しい現実”…15年続いたジャクソンとの抗争はどんな結末を迎えたのか?
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2023/06/10 17:01
2008年12月、『UFC 92』での3度目の対戦を前に激しい刺殺戦を繰り広げるヴァンダレイ・シウバとクイントン・“ランペイジ”・ジャクソン
「ひとつの時代が終わった」UFCで目にした哀しい現実
シウバは“格下”の青コーナーで相手を待つ。一方、赤コーナーのジャクソンは観客にアピールしながら悠然と登場した。試合開始の合図のホーンが鳴り、「ここでは俺が上だぜ」と言わんばかりにジャクソンがプレッシャーを強めてゆく。自分の打撃の距離をとることができず戦いにくそうなシウバは、ときおり大振りのフックを振り回すが、かすりもしない。PRIDEとUFCではこんなにも違うものなのか。頭では理解していたつもりだったが、想像していた以上に哀しい現実を目にしながら、撮影を続けるほかなかった。
ほぼ打撃だけの試合展開にもかかわらず、なかなか打ち合わない両者に観客からの厳しいブーイングが飛ぶ。試合が始まって3分を過ぎたころ、幕切れは唐突に訪れた。距離を詰めようと前に出たシウバに対し、ジャクソンの左フックがカウンターで顎を直撃。大の字に倒れたシウバはピクリとも動かなかった。手数も少なく、クライマックスがない中での失神KO劇。このとき、ひとつの時代が終わったのだと私は改めて痛感した。
個人的には、もうこの2人が拳を交えることはないだろうと思っていた。しかし、前回の対戦から約10年ぶりの2018年9月にBellatorでマッチアップされた。UFCでの試合よりも接戦だったが、結果はジャクソンの2ラウンドTKO勝ち。だが、いちばんの見せ場は試合後に抱擁を交わす2人の姿だった。5度目の対戦を示唆するように指を5本立てたシウバに対して、ジャクソンは「もう十分だろう」という表情を見せながらも、笑顔で応じていた。
その後、シウバは交通事故による怪我などもあり、2022年9月にMMAからの引退を発表した。
一方のジャクソンは、2019年12月に行われたBellatorの日本大会に登場。エメリヤーエンコ・ヒョードルの日本でのラストマッチの相手を務めたが、これ以降は試合をしていない。
対戦成績は2勝2敗の五分。ジャクソンが勝利した2試合で、PRIDE時代の熱狂が蘇ることはなかった。それでもシウバとジャクソンは初対決から15年のときを経て、4度目の対戦でようやく因縁を清算した。お互いを赦し合い、分かり合えた2人に、5度目の対戦は必要なかったのだろう。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。