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タップの瞬間、RENAの顔は歪んでいた…“衝撃の敗戦”はなぜ起きたのか? 対戦相手は「またRIZINで試合がしたい」、“カラフルな海外勢”がもたらすものは
posted2023/05/08 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
負傷欠場明けの復帰戦で、またケガをしてしまった。9カ月前は勝つことができたが、今度は一本負け。RIZIN女子戦線を支えてきたRENAに、過酷な運命が待っていた。
4月29日の『RIZIN LANDMARK 5』(国立代々木競技場第一体育館)。RENAはフランスのクレア・ロペスと51kg契約で対戦。3ラウンド4分21秒、ヒザ十字固めで敗れた。
RENAvsロペス「タフとしか言いようがない試合」
ロペスはRIZIN初登場。子供時代から器械体操で活躍し17歳でムエタイを始めたという。出産、育児を経て今度はMMAに挑戦。ギアナに住み南米の大会で結果を残してきた。現在はロンドンのジムに所属。ギアナの家が火事になり、新たな環境を求めたそうだ。
試合で見せたしぶとさは、そんな波乱の人生で培われたものなのか。タフとしか言いようがない試合を制したのはロペスだった。
1ラウンド、パンチからテイクダウンに成功したロペス。打撃のスペシャリストであるRENAに対し、まったく臆するところがなかった。ガードポジションからの仕掛けを潰しながらヒジを落とし、RENAの腕ひしぎ十字固めもディフェンス。そこから顔面を踏みつけていった。
中盤からはRENAが挽回。スタンドの展開で上回り、ロペスを下がらせる。特にボディへのダメージが見て取れた。スタミナも切れてきたようだ。ただ、ロペスも懸命に打撃を返す。RENAが一気に詰めていきたいところで反撃。一方的なペースにはならない。
前半に喫したテイクダウンの“残像”もあったのではないか。前進して連打をまとめたい場面でも「カウンターのタックルがくるかも」と思うと躊躇してしまう。それもまた、MMAという競技における攻防の妙だ。
ヒザ十字→タップの瞬間、RENAの顔は歪んだ
最終3ラウンド、その最終盤。もつれるように組みついたロペスは、抑え込んだままRENAの右足を両足でフック。逆の足は上体で固め、変形のヒザ十字固めを極めた。
オーバーアンダー(噛みつき)と呼ばれる状態でパスガードを狙い、そこから足関節。RENAはパスを防ぎながら両足でのガードポジションに戻し、立ち上がりたかったのだろう。タップした瞬間の顔の歪み方は、単なる痛みだけでなく虚を突かれたからだったように思える。