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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
21分間で4ゴール…湘南・町野修斗のJリーグ史上初の大記録はいかにして生まれたのか?「記録は、死ぬまで抜かれたくはないですね(笑)」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/06/10 11:04
Jリーグで得点ランク3位タイの8ゴールをあげている湘南ベルマーレのFW町野修斗
味方を狙った右FKのボールを、前に出てきた谷が触ってボールはファーサイドの町野へ。左足から右足に持ち返ると、間髪置かずにフワリとクロスを送るように放ったシュートはGKの頭上を越えてネットに吸い込まれていった。
「最初はニアで合わせようと思ったんです。でもキッカーとタイミングが合わなくて、動き直しをしたときにボールが来ちゃったんでファーに行くしかなかった。こぼれてきそうなボールだなと思って準備していたら、案の定こぼれてきました。
(左足)ワンタッチで上げるふりをちょっとやっているんです。そこから右足に止めたときにボールが思ったより足もとよりになった。シュートの選択肢がないようなコントロールになったので、だったら逆手に取れるんじゃないかな、と。もうちょいコントロールが長ければゴールカバーに入っていた選手も(シュートだと思って)そこにそのままいたと思うんです。感覚的に何となく相手はみんなクロスだと思っているなって感じ取れたし、角度的にもボールを良いところに置けたのでクロスのフリをしてシュートという選択に変えることができました」
最初からシュートを狙ったわけではない。
自分の状況と相手側の状況を判断して、プレーの選択を変えたのだ。FKからシュートまでの間はわずか5秒ほど。短い時間で情報をかき集め、最適解を弾き出したのだから恐れ入る。
起点をつくる動きも裏への抜け出しもチャンスメークも、シュートでは右足でも左足でも頭でも。何でもできるタイプではあるのだが、町野の特長としてプレーの選択を読み取らせない妙がある。
「みんなクロスだと思っている」というより、つまりはそう“思わせている”。
「何を考えているのか分からない」と言われることも…
話を聞いていても、訥々と語り、受け手に感情を読み取らせていないことに気づかされる。ハットリくんではないが、これもまた忍者っぽいのである。