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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
21分間で4ゴール…湘南・町野修斗のJリーグ史上初の大記録はいかにして生まれたのか?「記録は、死ぬまで抜かれたくはないですね(笑)」
posted2023/06/10 11:04
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
忍者は気配を消すのがうまい。音を立てない抜き足、差し足、忍び足でアイツはやってくる。
先のカタールワールドカップメンバーで、湘南ベルマーレのエース、町野修斗は4月1日、ホームでのガンバ大阪戦において、J史上初めて前半だけで4ゴールを叩き出した。プロ6年目にして初のハットリ、もとい、ハットトリックを達成している。
阿部浩之の浮き球パスに反応し、昨季までチームメイトだったGK谷晃生のキックミスを誘って先制点を奪うと、2点目のシーンは前半38分に訪れた。
左サイドに寄ってくさびのパスをワンタッチではたいてリターンを受けると、前に出ていくタリクに渡してから自分も前へ。右サイドからクロスが送られ、クリアが相手にあたってこぼれてきたボールをニアに蹴り込んだ。
町野はこのように語る。
「右からのクロスに対して、ニアに誰もいなかったので本来ならそこに行くべきでした。ただ位置と状況を考えれば(ニアに向かうには)厳しかった。あのポジションにいて、うまいことこぼれてきたのでラッキーでしたね」
結果的にはラッキーだったとしても、ゴールまでの道程は相手からすれば巧妙という意味においてトリッキーだ。
1点目も2点目もボールを受けると同時にワンタッチで展開して、味方のリターンもワンタッチ。そうやって相手の目線を惑わせることで隙やズレを呼び込んでいる。
「自分にマークが集中する分、より周りが空くことになりますから。僕自身、周りを使うのは得意なほうなので」
町野の凄みが出た3点目
相手の注意を周囲に拡散させてゴール前へ迫るから気配が薄まるというわけだ。まさに忍者が敵から隠れる「遁術(とんじゅつ)」のようだ。
町野の凄味を感じ取れるのが、その2分後の3点目である。