田口　現役時代、私は走り込みを結構していて努力を積み重ねていました。貫太も実は自分自身にノルマを課して、トレセン実習中も毎日10km走っていたみたいです。歌手のUVERworldのTAKUYA∞さんが好きで、彼が毎日10km走っていることに影響されたんです。単純でしょ（笑）。でも、どれだけ走り込んでもレースではまた違うから最初はしんどいと思うよ、と伝えていたら、デビューした後「お母さん、ホンマしんどいわ」と話してきたことがありました。

――母子でその話で通じ合えるのがすごいですね。

田口　「お母さんは4コーナーでいつもひと呼吸して休んでたよ。そこで馬も休めるから、直線ギューンと行くねん」という話もしていました。最初は「そんなん嘘やわ」と言っていましたけど、デビューしてから「ホンマやな」と言っていました。貫太には「最初のうちはカッコよく乗ることよりも、馬の邪魔をしないように乗りなさい」とアドバイスをしていたんですけど、最近は上手にカッコよく乗れているから、だいぶ筋力もついてきたんだろうなと思います。

元騎手で調教師の父・輝彦さん（左）と元騎手の母・広美さん。競馬学校の卒業式で親子3人が揃った　©NIKKAN SPORTS

母＆アンカツさんが思った「仕掛けが早い」

――騎手経験者同士で分かり合える話も多いでしょうね。デビュー翌週には所属の大橋厩舎の馬と笠松競馬場に遠征し、初勝利を挙げました。

田口　こんなに上手くいっていいのかな、とビックリするくらいで、大橋調教師にはこうした機会を作っていただいて有難いです。当日は職場にお母ちゃんが来るのは嫌やろうからテレビ越しに見ようかと思っていたんですけど、知り合いの元厩務員に誘われたので、応援に行っちゃいました。「仕掛けが早い、早い」と思いましたけど、馬が強くて勝つことができました。

――ご自身も乗っていた競馬場なだけに、仕掛けのポイントも熟知しているんですね。その後、JRAでも初勝利を挙げましたね。

田口　所属の大橋調教師をはじめ、たくさんの関係者の方にとてもお世話になっています。他にも、JRA初勝利を挙げた直後に笠松のレジェンド厩務員の送別会があって、その席で勝己さん（安藤勝己元騎手）から懇々と注意を受けていました。着くなりすぐ「ここに来なさい」と呼ばれて、「仕掛けが早い」って。そのアドバイスを聞いて、少しゆっくり考えて乗れるようになって2勝目、3勝目へと繋がったのかなと思います。私も現役時代は勝己さんにたくさん教えていただいて、貫太も同じように教えていただく姿を見て胸がキュンとしました。

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