Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER

[Vを呼んだ人心掌握術]星野仙一「怖さより、深い優しさで」

posted2023/06/04 09:03

 
[Vを呼んだ人心掌握術]星野仙一「怖さより、深い優しさで」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

PROFILE

photograph by

JIJI PRESS

18年ぶりのリーグ優勝に導いた2003年。頂点に立った日、赤星との抱擁に闘将の心根がみえた。「劇薬」とも称された男がみせた鬼と仏の顔。暗黒時代と決別させた2年間の真実を探った。

 2002年、タイガースの選手たちは、覚悟を決めなければならなかった。

 星野さんがやってくる。きっと、怒られるんやろな――。

 1980年代の終わりから阪神は低迷期に入っていた。'01年まで4年連続で最下位、しかも久々の外様監督として野村克也を招いても状況は変わらなかった。そこに中日で指揮を執っていた星野仙一を招聘した。劇薬の投入である。

 愛知県刈谷市出身、'01年に入団した赤星憲広は「闘将星野」のファンとして育った。

「中日の人というイメージが強く、厳しいことで有名でしたが、阪神で震えあがるほど怖かったかというと、そんなことはなかったです。むしろ、人心掌握術に優れていて、選手個人に対してアプローチを変えられる繊細さを持ってらっしゃった方です」

 赤星は「プロにたどり着くまでに遠回りした」という感覚を持っており、逆境に追い込まれれば追い込まれるほど、燃えるタイプだった。

「星野さんはすぐに僕の性格を見抜いたと思います。キャンプの時、新聞に開幕予想オーダーが出るじゃないですか。僕の名前は入っていませんでした。代走要員。監督がそういう雰囲気を出すんです。当然、危機感が芽生えます」

 2月の春季キャンプ中、翌日が休養日となる夜、赤星は宿舎の前で、たったひとりで素振りを続けていた。そこに関係者と会食を終え、ご機嫌の星野が帰ってきた。

こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
NumberWeb有料会員になると続きをお読みいただけます。

残り: 5684文字

NumberWeb有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。

関連記事

#阪神タイガース
#星野仙一
#赤星憲広
#今岡誠
#金本知憲
#田淵幸一
#井川慶
#吉野誠
#岡田彰布
#御子柴進
#野村克也
#葛西稔

プロ野球の前後の記事

ページトップ