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“爆発的に跳ぶ”ために毎日“腹筋500回”!? バレー古賀紗理那ジャンプ改造計画…スピードのプロが絶賛する理由「楽しみな夫婦ですね」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/02 11:05
Vリーグ制覇、皇后杯優勝に貢献した古賀紗理那(NECレッドロケッツ)。ジャンプ改造に着手したことでスパイクに余裕が生まれた
そんな変化の謎を解き明かしてくれたのは、古賀が信頼を寄せる“里さん”、NECレッドロケッツでハイパフォーマンスディレクター兼パフォーマンスアーキテクトを務める里大輔(37歳)氏だ。
元陸上競技の短距離選手だった里氏は、陸上競技だけでなくラグビーやサッカー、野球などさまざまな競技に携わり、スピード動作に特化したコーチングを行なっている。
そんな“スピードコーチ”がバレーボールにどうつながるのか。大半が抱くであろう疑問を、里氏自身が解説する。
「僕は1つの動きを動画ではなく、1枚1枚コマ送りの静止画としてとらえています。言うならば、パラパラ漫画のイメージ。全体のコマがシームレスになっているか。コマがかぶっていたら無駄を省き、コマが不足していたら加える。走るスピードではなく動作の速さ、動作の1個1個を組み合わせて速く動かすことが僕の役割なので、種目の違いはない。ラグビーでもバレーボールでも見ているものは同じ感覚です」
「私、もっとよくなりますか?」
どの競技も同じとはいえ、バレーボールの戦術や戦略に関しては門外漢。2021/22シーズンから参画するレッドロケッツでは、組織全体のパフォーマンス向上を計画しながら、バレーボールの速さ・強さ・巧みさを言語化して個々のプレーを設計する業務を担っているが、当初は選手の顔と名前が一致しないことも多く、古賀のことも詳しくは把握していなかった。周囲から「すごい選手」と評されていることは耳にしていたものの、「確かにトータルの能力は高いが、これといった強烈な武器は感じなかった」。
無知ゆえの強みか、日本代表として活躍してきた古賀にストレートに聞いた。
「何が自分の強みだと思っている?」
すると、古賀は目の前でムズムズしながら、こう返してきた。
「私、もっとよくなりますか?」
間髪いれず、里氏は答える。
「よくなるか、ならないかと言われたら、よくなるに決まっているでしょ。動かし方を知らないんだから。その質問の時点で“八流”だぞ」
それから約1年。里氏は古賀が見せてきた進化の過程を説き、そして訂正する。
「(古賀は)伝えた言葉を絵にする力に長けていて、言ったことができるようになるスピードがめちゃくちゃ速い。しかもそれをゲームで発揮する速度が素晴らしく速い。“八流”どころか、しっかり“一流”でした(笑)」