「障がい者レスリングは世界でも例がない」からこそ

　それどころか新たなチャレンジもしている。レスリング界への復帰＝パラレスリングの創設だ。特定非営利活動法人「日本障がい者レスリング連盟」を設立し、自身も大会にエントリー。パラレスリングというスポーツを確立するための試行錯誤を続けている。

「一言で障がいと言っても、片足がない人、両足がない人、腕がない人いろいろだからね。それぞれの障がいに応じてポイントを変えたり、階級も含めてルール作りをしていかなきゃいけない。難しいけど、障がい者レスリングは世界でも例がないことだから、我々がやることでパイオニアになれるんですよ」

　レスリングはプロアマが友好関係にあり、障がい者レスリング連盟にもプロレス部門があるという。hotシュシュ代表の千春には「いずれ女子の担当理事になってもらいたい」。

ADVERTISEMENT

　勝村戦が行われたのは埼玉県にあるアイスリボンの道場兼常設会場で、そこに刺激を受けたと谷津。

「こういうところで試合すると、いつか“障がい者レスリング会館”も作りたくなるね」

　話しながら今後のプランが次々と頭に浮かび、夢が膨らんでいるような感じだ。とてつもないエネルギーと言うしかない。その源は何なのか。

　障がい者レスリング連盟の公式サイト、その動画コーナーに『義足の青春』というタイトルが付いていたのを思い出した。66歳、しかし義足レスラーとしてはまだキャリア2年ほど。未知のことがたくさんある。谷津嘉章はチャレンジを続けることで“青春”を生きているのだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。