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「藤井聡太さんも羽生善治さんも大天才」「純粋に将棋を楽しんでいる」“2人の共通点と違い”をNHK担当Dが語る「AIについては…」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byNHK
posted2023/06/01 11:03
王将戦で初タイトル戦を戦った藤井聡太王将(右)と羽生善治九段。番組制作者の目にはどう映ったか
番組でのインタビューの際、羽生は当時WBCが開催されていたこともあって、野球でのたとえ話をしていた。その際にこう語っていた。
〈どのコースを投げても打たれそうだと。このコースを投げて打たれた。じゃあこっちに投げてみよう。で、また打たれた。で、次どこに投げようかなというような……そういう感じです。分かります?〉
文字だけで見ると、伝わらないものがある。取材者の機微だ。マスク越しとはいえ羽生の表情がハッキリと、田嶋のまぶたに焼き付いている。
「投げる球がないと言いながら、すごく楽しそうだったんです。その姿を見て『あ、でもまだ他にも投げたいボールがあるんだな』と。藤井さんから返ってくる球がきっと、面白いんだと思うんですよ。たぶん今までにないような球を返されているから、負けたとしても羽生さんの中で楽しさを感じている。何か自分の中でレベルアップしている――また一歩ずつ将棋が強くなった――という感覚があるのかもしれませんね」
藤井さんにもインスピレーションを与えるかもしれない
叡王戦3連覇を果たした藤井は最年少名人、そして羽生だけが経験した「七冠」への歩みを進めている。
7月で21歳となる気鋭の天才と、9月に53歳となる羽生に再戦の機会が訪れたとしたら、どんな世界を見せてくれるのか。小堺は新たなステージに向かおうとする羽生と将棋の未来を想像していた。
「AIで人の働き方、社会がどう変わるかという時代にあって、将棋は最先端にあります。その中にあって羽生さんのように、少し違う角度でAIと向き合う人物が、藤井さんなど若い世代に違うインスピレーションを与えるかもしれない。
そう言えば今度、日本将棋連盟の役員に立候補されましたね。これは仮定の話ですが――もし会長になったとしたら、盤外でもどんな手を決断するのか。そういったことを人々に期待させる人物で、今後も目が離せません」
何より、その存在感は盤上でも、である。
「会長でタイトル保持者、というのも本人は目指しているのではないでしょうか(笑)。それが実現したら、とても面白いですよね」<#1、#2からつづく>
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