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「もう1局指せる」藤井聡太23歳“崖っぷち”評価値30%台→逆転で初カド番をしのいだが…険しい表情のまま「窮地で立て直すのが」響く谷川浩司の言葉

posted2026/03/14 06:00

 
「もう1局指せる」藤井聡太23歳“崖っぷち”評価値30%台→逆転で初カド番をしのいだが…険しい表情のまま「窮地で立て直すのが」響く谷川浩司の言葉<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

王将戦第5局の藤井聡太王将。初のカド番を見事にしのいだ

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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 ALSOK杯第75期王将戦七番勝負第5局は、3月8、9日に栃木県大田原市で行われた。藤井聡太王将(23=竜王・名人・王位・棋王・棋聖を含めて六冠)は挑戦者の永瀬拓矢九段(33)に1勝3敗と負け越し、崖っぷちに追い込まれた状況だった。永瀬は中盤で予想外の端攻めで仕掛け、以降も厳しく攻め込んだ。藤井は苦しい形勢となったが、終盤で受けの絶妙手で自玉を守って勝ち、初めてのカド番をしのいだ。藤井は2勝3敗と挽回したが、次の第6局もカド番が続く。順位戦A級在籍経験のある田丸昇九段が王将戦第5局の激闘を解説する。

藤井が語った「精神的には良好とは…」

 栃木県大田原市「ホテル花月」の対局場は、王将戦のタイトル戦でこれまでに何局も行われた。近くを那珂川が流れていて穏やかな田園地帯である。私こと田丸は2017年、19年の王将戦で立会人を務めた。

 事前の対局者インタビューで、藤井王将は「均整の取れた局面で2日目を迎えることができない。内容が良くないことが結果に出ている。精神的に良好とは言えない」と正直に語ったという。さすがの藤井も、弱音と言える表現をした。

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 一方の永瀬九段は「王手をかけた状況(タイトル奪取まであと1勝)で、初めての景色を見られると思ったら、意外にそうでもなかった」と苦笑いしたという。第4局に勝ったときには、「何かを変えたのではなく、今までやってきたことが間違ってなかった。それが徐々に結果となった」と冷静に語った。タイトル奪取を目前にして自然体に構えている。

「戦機をつかまれてしまった」と藤井が語った一手

 王将戦第5局は永瀬が先手番。持ち時間は各8時間。

 永瀬は「真剣」と称する角換わり腰掛け銀を目指した。今期王将戦では第1局と第4局がその戦型になった。第5局で藤井は角交換を拒否し、三段目に2枚の銀を並べる雁木(がんぎ)の囲いに組んだ。永瀬も形が少し違う雁木に組んだ。

 藤井は玉を囲う位置で、左側への4一、右側への6二の二択があった。通常は前者だが、後者も実戦例が多い。藤井は後者を選択し、右玉囲いを目指した。先手の飛車から遠ざかり、持久戦に持ち込む意図がある。

 永瀬はその局面で59分の長考をした。

【次ページ】 《永瀬60%台―藤井30%台》がずっと続いたが

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