猛牛のささやきBACK NUMBER
“最後のPL戦士”中川圭太(27歳)が明かす“大阪桐蔭の応援”への特別な想い「打席で聴ける日がくるなんて…」高3夏の熱い記憶とは?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by KYODO
posted2023/05/29 11:00
大阪桐蔭高校吹奏楽部がスタンドで応援した5月21日の日本ハム戦、3ランを放ったオリックス中川圭太(27歳)
「僕も実際、甲子園であの応援を聞いたことがあるんです。高校3年生の夏が終わって、引退したあと、その年の甲子園の大阪桐蔭の準決勝を生で観にいって、アルプススタンドで応援させてもらいました。その時も、すごく感動した。特にあのスラッガーの曲。『We are スラッガー』でしたっけ? あ、『You are スラッガー』か。その曲を、僕も打席で聴ける日がくるなんて思ってなかったんで、聴き入っちゃって」
『You are スラッガー』は、強打者の打席で使われる大阪桐蔭オリジナルの応援曲だ。その日は、6回裏に回ってきた中川の第4打席で、その曲が奏でられ、興奮は最高潮に達した。
「カッコいいなー!って、それでテンションが上がっていました。ほんまにすごいですね。音が違うというか。本当にカッコよかった。ただただすごかったです」
脳裏に、高3夏の甲子園のアルプススタンドの光景が蘇っていた。
高校最後の夏に地方大会で敗れると、悔しくてその夏の甲子園は見られなかったと話す球児もいる。しかし中川は「まったくそれはなかった」と振り返る。
「負けた瞬間から、日本一になってほしいと」
「(大阪大会決勝の)試合後に、当時の(大阪桐蔭の)キャプテンの中村誠に、『優勝旗、持って帰ってこいよ』みたいな感じで言ってたので。あの負けた瞬間からもう、(大阪桐蔭に)日本一になってほしいと思っていました。本当に強かったですし。見たくないとか、悔しいとかより、応援しかなかったです。純粋に勝ってほしいと思っていました」
そしてその夏、大阪桐蔭は全国制覇することになる。
オリックスの中川は、どんな時もあまり表情を変えず、良くても悪くても一喜一憂することなく、「今日やるべきことを決めてやっているだけ」といつもクールだ。取材ではあまり多くを語らないこともあり、なんとなくマシーンのようなイメージを抱いていた。その中川に、こんな胸熱な記憶が眠っていたなんて、と勝手に感動してしまった。