早めに前へ並びかけていったコスモバルクを追う形でスパートしたルメールとハーツクライは残り200m地点、堂々と先頭に躍り出る。外からはディープインパクトが追いすがるも、緩みのないラップが刻まれた3、4コーナーで外々を回らされた影響もあってか、意外に伸びきれない。

　残り100m、ステッキを右から左に持ち替えてルメールが追う。これに応え、ハーツクライももうひと伸び。相手の追撃を半馬身差に封じてゴールを駆け抜けた。

最後の直線　©JIJI PRESS

ディープインパクトに初めて勝った競走馬、そしてジョッキーとなったハーツクライ＆ルメールのコンビ　©JIJI PRESS

「もう、嬉しいの一言やったね。ジャパンCの悔しさがいっぺんに吹き飛んだ」とは橋口の回想。一方のルメールにとってはこれが初のJRA重賞制覇で、惜敗の連鎖に念願の終止符を打った。

　冒頭にも記した通り、無傷の三冠馬に初めての土をつけたこのレースは、多くの人に“金星”と認識されている。しかしルメールはその見立てに不満を隠さない。

「ドバイでも（世界の一線級と熾烈な死闘を演じた）“キングジョージ”でも証明した通り、ハーツクライは世界のトップホースです。ディープインパクトを負かせたのはたまたまではないし、ハーツクライに負けたのも恥じるべきことではない」

完遂したパーフェクトレース

　とはいえ勝ち負けのシーソーが、どちらに傾いても不思議ではなかったこともまた確かである。

「位置取りがもう少し後ろだったら勝てなかったと思うし、他の人がハーツクライに乗っていたら、あのポジションにはならなかったでしょう。そういう意味では本当、パーフェクトなレースができました」

　王者と王者がぶつかりあい、“パーフェクト”にレースを運んだほうが勝った。それがあの有馬記念の実像だったのだ。