藤井は「勝ちをはっきり見通せるところはなかった」（終局後の感想戦）と思っていたそうだが、終局は突然にやってきた。

　藤井が▲7五角と王手をかけた局面は、相手玉がどこに逃げても左右挟撃の寄せが厳しい。渡辺は攻防ともに見込みがないと判断して投了した。69手の短手数だった。終局時間は17時からの夕食休憩を控えた16時45分。

名人位へあと1勝とした藤井竜王　©日本将棋連盟

「スコアのことは意識せず、いい状態で」

　渡辺名人は第3局の終盤で鮮やかな攻防の妙手で勝ち、第4局以降の巻き返しが期待されていた。しかし本局では攻めの選択を誤り、完敗する結果となった。

　藤井竜王は第4局に勝って3勝1敗とし、最年少記録で名人の獲得と「七冠」まで、あと1勝と迫った。終局後には「スコアのことは意識せず、いい状態で臨みたい」と語り、いつものように平静な様子だった。

　名人戦第5局は、5月31日、6月1日に長野県高山村「緑霞山宿 藤井荘」で行われる。「藤井荘」で「藤井新名人」が誕生する可能性が高くなった。

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