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清楚に戦う女流棋士の日常は「サッカー好きドジっ子」? 渡辺明名人vs藤井聡太竜王の“聞き手ウラ話”も…観る将マンガ家が渡部愛さんに直撃
posted2023/05/21 11:01
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph by
Junsei Chida/Yuki Suenaga
僕ら夫婦が、いわゆる「観る将」となって数年が経ちました。盤面で繰り広げられる妙手の数々、その一方で“ユルくてかわいい”おやつや食事、棋士の盤外でのユーモラスなキャラクターを楽しんでいるんですが、特にそれまで全く将棋を触れたことがなかった妻氏は、当時初タイトル獲得を目指している時期の藤井聡太竜王(王位・棋王・叡王・王将・棋聖と六冠)を中心に対局中継を見始めた頃、こんな風に感じていたそうです。
“女流棋士の対局と日常”って意外と知らないかも
「中継で解説してる聞き手の女性って、清楚かつトーク力も高い人たちばかりだけど……専門のアナウンサーじゃないんだ」
将棋ファンの方ならご存じかと思いますが、対局中継や大盤解説会では、盤面を挟んで解説役の棋士の話についていく「聞き手」がいます。それを女流棋士の皆さんが務めているわけですが、当時“超初心者”だった妻氏はそこで女流棋士の存在も知っていき、気づけば「女流ABEMAトーナメント」を視聴して号泣するなど、超ハイスピードで沼へとハマっていくことに(笑)。
「そう考えると対局中の雑談などで人となりに触れることはできるけど、女流棋士の対局での出来事や日常生活って、意外と知らないかも。機会があったらお話を伺ってみたいね」
すると、毎月のハイライトをやり取りしている担当編集さんから「あ、渡部愛女流三段に以前取材させてもらったことがあって、お話を聞かせてくれるかもしれません。とてもマジメでいい方ですし、おふたりと同じくサッカー好きなんで、盛り上がるかと。ご本人に聞いてみますね」との返信が。
渡部女流三段! 現在行われている名人戦、渡辺明名人と藤井竜王が相まみえた第1局での中継で聞き手をしていたし、ABEMAトーナメントでもキリッとした佇まいで司会をしている方じゃないか。なにより「女流王位」1期獲得のタイトル経験者、なおかつ北海道コンサドーレ札幌サポに会えるだなんて――ホントに会ってくれるものだろうか――と思っていたところ、渡部女流三段も大歓迎とのこと。マジっすか。
そもそも、なぜ少女時代の渡部さんは将棋に興味を?
「はじめまして! 渡部です。いつもイラスト、楽しみにしております」
取材を兼ねた食事会の待ち合わせ場所に到着すると、楚々とした装いで“うわああ、ホントの渡部さんだあ(これ以降はさんづけで呼ばせてもらいます)”と目を奪われました。でも聞くと「いや、私の方が緊張しています……イラストよく見ています」と言われ、超絶嬉しかったのとともに、今後も全力、いや200%のパワーでイラストを描いていこうと思った次第です(笑)。
本題に入りましょう。夫婦共通の素朴な疑問として聞いてみたかったのは〈将棋を始めたきっかけ/どうして女流棋士になろうと思ったのか〉、ルーツの部分でした。