濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「頑張ったね」頚髄損傷のリング事故から1年、大谷晋二郎の頭を7歳の娘がなでて…車椅子で語った思い「僕は杉浦貴と闘ってよかった」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/05/19 17:15
1年1カ月ぶりにプロレス会場に姿を現した大谷晋二郎。
ステージに登場、特大の“大谷コール”
当日の体調しだいで来場できない場合もある。事前にそうアナウンスされていたが、大谷は大会オープニングでステージに。ゲストの藤波辰爾に呼び込まれ、特大の“大谷コール”を浴びた。
みんながカメラを構える。目の前に大谷晋二郎がいる。それだけで感極まる。しかし「いる」どころではなかった。大谷はあくまで大谷らしく、ファンに語りかけた。
「あぁ、プロレスの匂いがする。プロレスの声が聞こえる。プロレスの空気を感じる。
昨年4月にケガをして以来、多くの方たちから頑張れ、負けるな、立ち上がれと熱いエールをいただきました。でも僕はそのたびに思ってしまうんです。頑張ってるのは僕だけじゃない。日々、闘うプロレスラーはもちろん、今日ご来場いただいたみなさまも、毎日どこかで歯を食いしばりながら、一生懸命誰かのために頑張ってるんです。
だから、毎日頑張るみなさまに、僕からもエールを送らせてください。頑張れ、頑張ろう、頑張るんだ。負けてたまるか! そして、一生懸命頑張ったやつは報われなきゃ嘘だ。長年、言い続けてきたこの言葉を、僕がこの身体で、これから証明していきたいと思います。今日も、僕のプロレス界での熱い熱い仲間たちが全力でみなさまに元気を与えてくださいます。本日も最後まで思い切りプロレスをお楽しみください」
「杉浦選手、僕はあなたにお礼が言いたい」
表に出ること、話すこと、それだけでも今の大谷には大変なはずだ。途中で2度、水分を補給しながらのスピーチ。ステージには、この日のメインイベンターである杉浦貴も登場した。
「大谷選手に恥ずかしくないように、リングで大谷選手を待っています」
そう語った杉浦に、大谷は「お礼が言いたい」という。
「杉浦選手、僕はあなたにお礼が言いたい。昨年4月、僕と闘い、僕は大ケガを負い、でもその後、ずっと強いプロレスラーでい続けて、プロレスをずっとずっと続けてくれて、心からありがとうございます。でも、次闘う時はぜってーに負けねぇからな!」
出場選手たちと記念撮影をしてステージを降りた大谷は、マスコミ向けの囲み取材も。正直、そこまでしてくれるのかと思った。無理はしないでくれ、とも。しかし彼は溢れる思いを言葉にし続けた。