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揺れるソフトバンク「捕手は併用すべきか」問題…野村克也・甲斐拓也ら「黄金期は正捕手がいた」歴史も“DeNAから加入選手”で変革か
posted2023/05/11 11:02
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
JIJI PRESS
捕手は「固定」か「併用」か――。
いま、ソフトバンクはどちらの戦い方を選択するのか、その分岐点に立っているように見える。
チームの正捕手といえば言わずもがな甲斐拓也である。先のWBCでは侍ジャパンの一員として優勝メンバーとなった。大舞台を戦いきった心身の疲労や開幕直前までチームから離れていたことなどが懸念されたものの「全然問題ない。僕の中では『切り替え』という考え方もないですし。だって、やるべきことは変わらないので」と涼しい顔で話し、例年同様に開幕からマスクを被り続けている。
ただ、かつては“扇の要はチームに一人”との考えが球界の主流だったが、近年はトレンドが変化している。
「正捕手を決めない」潮流はいつから?
以前から捕手併用の球団がなかったわけではないが、傾向がより強まったのは2010年代の後半以降だろう。'18年パ・リーグ王者の西武(先発マスク/森友哉74試合、炭谷銀仁朗41試合、岡田雅利28試合)や'19年セ・リーグ王者の巨人(先発マスク/小林誠司68試合、炭谷41試合、大城卓三30試合、岸田行倫2試合、宇佐見真吾1試合、阿部慎之助1試合)の成功例が後押しになったのか、'20年シーズンには12球団全体でも規定打席に乗った捕手はわずか1人、西武の森だけだった。
その年は甲斐ですら規定未到達だったわけだが、調べればわずか12打席足りなかっただけで実質的には正捕手を務めていた。
'21年はシーズン中に東京オリンピックにも参加しつつ143試合にフル出場。昨季も130試合に出場している。
だがしかし、そんなソフトバンクに今年は「捕手併用」の可能性が浮上したのは、昨季終了後にDeNAから国内フリーエージェント(FA)権を行使していた嶺井博希捕手を獲得したためだ。