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格闘技PRESSBACK NUMBER
「BreakingDownも格闘技。ただ、あれをカッコいいと思ったら…」“格闘技界の裏番長”金原正徳40歳が「ホンモノのMMA」にこだわる理由
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/04/28 17:01
2022年4月、金原正徳は『RIZIN TRIGGER 3rd』で摩嶋一整にTKO勝ち。RIZIN2連勝を飾り、盟友・所英男と肩を組んで喜びを分かち合った
山本美憂48歳のエール「40歳なんて小僧だよ」
金原は達観こそしているものの、悲観はしていない。お目当ての選手の応援、あるいはハプニングを期待してRIZINの会場を訪れた観客が、たまたまピュアなMMAの試合を目にしたときに「こんなに面白い競技があるのか」と驚いてくれたら、それでいいという。
「ひとりでも、ふたりでもいい。『面白そうだから、自分もやってみよう』と思ってもらえることが理想ですね。そのきっかけは、別に僕の試合でなくてもいい」
さらに金原は「MMAの深みを知ってもらうことが僕らの世代の役目」と考えている。
「格闘技を広めるという作業は、朝倉未来や那須川天心のようなスターがやればいい。でも、スターにはできなくても、僕らにはできるということもある。僕らが居座ることで、若造たちに勘違いさせないことも大事なんでね(笑)」
金原が口にした「僕ら」とは、四十路を迎えてなお現役を続ける世代を指す。
「所(英男)さん、北岡(悟)さん、宇野(薫)さん……。ありがたいことに僕より年上の、それこそVHSで見ていた人たちがまだやっている。そう思うと、自分なんてまだまだですよ。僕にもお金を稼ぎたい、有名になりたいという思いはもちろんありましたけど、いまは全くない。僕ら“DREAM・戦極世代”は、格闘技が好きで続けている人ばかり。いつかは自分にも限界が来ると思うけど、年齢を言い訳に辞めたくはない。自分の価値がなくなったときが、辞めどきだと思っています」
48歳の山本美憂は、当初5月6日開催の『RIZIN.42』で引退試合を予定していたが、前十字靭帯断裂の大ケガを負ったため延期になってしまった。自分より8歳も年長の美憂は、私生活ではすでに「おばあちゃん」でもある。そんな美憂から、金原はうれしい言葉をかけられた。
「40なんて小僧だよ。これからだよ」
美憂からの一言で、金原は俄然やる気が湧いた。
「自分のYouTubeのコメント欄に『こんなオジさんが第一線で活躍できる日本のMMA業界(笑)』という書き込みがありました。でもMMAはやることが多いぶん、勝負できるところを選択できるので年をとってもまだ生き残れる。格闘技の中で一番過酷な競技だけど、一番長く続けられる競技なのかなと思いますね」
ベテランにとっても、アプローチの仕方次第で“格闘技新時代”は居心地のいい世界になるのだろうか。オジさんにはオジさんの知恵がある。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。