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格闘技PRESSBACK NUMBER
「BreakingDownも格闘技。ただ、あれをカッコいいと思ったら…」“格闘技界の裏番長”金原正徳40歳が「ホンモノのMMA」にこだわる理由
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/04/28 17:01
2022年4月、金原正徳は『RIZIN TRIGGER 3rd』で摩嶋一整にTKO勝ち。RIZIN2連勝を飾り、盟友・所英男と肩を組んで喜びを分かち合った
“コテコテのMMA”は伝わりにくい?
会見での「実力以上のものが評価されている」という発言通り、「数字(ビュアー数やフォロワー数)を稼いだ奴が偉い」という時代の流れには違和感がある。
「結局、強い・弱いは関係なく、大衆はその人のことが気になってしまっている。それで本人が勘違いする。周りのせいも大きいんじゃないですか」
そんな金原に「そもそも『BreakingDown』は格闘技なのか?」とストレートな問いを投げかけてみた。
「答えから言わせてもらうと、これも格闘技。だって、僕らと同じようにグローブをつけてスタートしているじゃないですか。1分間に設定された面白さもある。オーディションをやって視聴者を刺激する作り方も、あれはあれでいいと思う。僕も見ていて面白いと思うこともあるし、学ぶところもある」
もちろん、MMAとの中身の違いは感じている。
「あれをカッコいいと思ったら、炎上すれば数字がとれると勘違いして、どんどんそっちの方に流れる。それはよくない」
いまも『THE OUTSIDER』は存続こそしているが、かつての勢いは感じられない。では、『BreakingDown』の今後はどうなるのだろうか?
「時間が経てば、いつかは消えていくんじゃないですか。その中で残る人はホンモノ。やっぱりニセモノはいなくなるものだと思っています」
つまるところ、金原は「枠」(団体)ではなく、「個」(選手)として格闘技を捉えているということなのだろう。数々の団体を渡り歩かざるをえなかった“冬の時代”を生き抜いた者にしかわからない嗅覚が、そうさせているのかもしれない。
「格闘技って素晴らしい。色褪せちゃいけないものだと思っています。やっぱりスタンダードなMMAの作り込みには凄まじい深みがある。たとえば5分3ラウンドなら、ラウンドによって違う戦法をとる。そういうことを語れるファンがもっともっと増えてほしい」
試合を通して、MMAの面白さを伝えたい。金原の発言には自分が打ち込む競技に対する愛が溢れている。
しかしそんな思いとは対照的に、コアなMMAファンの底辺拡大は思うように進んでいない。金原は「MMAを語れる人は本当に少数」と冷静に分析する。
「それはわかりきったことですよ。知らない人が“コテコテのMMA”を見たら、つまらなく映るはず。だったら誰でもわかるような殴り合いをしたり、オーディションでケンカをしている方がわかりやすくて面白いですから」