「僕らに求められているのはケンカではない」

　そもそも、今回金原に取材をしようと思ったきっかけは、去る3月3日に都内で行われた『RIZIN LANDMARK 5』の記者会見で彼が発した一言だった。

「いまは実力以上のものが評価されてしまうこともある。格闘技は強さが全て」

　この会見で金原は父子鷹・山本空良との対戦が発表された。上記の言葉は、同じ大会で組まれた同階級のフェザー級の闘い（牛久絢太郎vs朝倉未来、斎藤裕vs平本蓮）について聞かれた際の回答だ。その発言の先に、朝倉と平本による舌戦や、『BreakingDown』の存在があることは明らかだった。

　後日、金原が会見時の心境を明かした。

「僕らに求められているのは、ケンカやトラッシュトークを繰り広げることではないと思っているんで」

　だったら何を見せるのか？

「ホンモノの格闘技を見せる。言い換えると、僕らが与えられるのは緊張感。ホンモノの格闘家同士がぶつかり合ったときのそれは、僕らにしか出せない。そこだけは、これからもずっと大切にしていきたい」

2021年10月、金原正徳は『RIZIN.31』で芦田崇宏にTKO勝ち　©RIZIN FF Susumu Nagao

　とはいえ、どんな試合になるかは想像すらしていない。「作ろうと思って、いい作品（試合）はできない」と考えているからだ。

「そもそも試合は対戦相手ありきだし、その中にストーリーがある。15分という試合時間だけではなく、各々が積み重ねてきたサイドストーリーも見てほしい。それがうまく交わったときに、いい作品ができると信じています。5年後、10年後に『金原と山本の試合はよかったね』と語り継がれるような試合をしたい。すぐに色褪せるような試合はしたくない」

　金原は20代、30代、そして不惑を迎えた現在と、年代によって全く異なる闘い方をしているところにも注目してほしいと付け加えた。

「別に褒められなくてもいいんですよ。『昔はあんなにイケイケだったのに、いまでは単なる組み付くオジさん』『もう打ち合えなくなってきた』と思ってもらってもいい。昔の自分と比較してもらえれば、僕の闘い方も時代によって変わってきたことがわかるでしょう」

【次ページ】　“コテコテのMMA”は伝わりにくい？