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「もうプロレスを続ける資格が…」スターダム・上谷沙弥が苦悩の先に見つけた“答え”「飛べる今のうちに飛びたいんです」《特別グラビア》
posted2023/02/02 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
スターダムの白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)の女王・上谷沙弥は、2月4日に大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)で渡辺桃を相手に14度目の防衛戦を行う。
挑戦者の渡辺はかつてこの白いベルトを保持し、13回防衛という記録を持っているが、「白いベルトには興味がない」と言い放ち、上谷に向かってこなかった。これはむしろ、自然な流れのように見えた。だが逆に、渡辺という一つの壁を「ぶち破りたい」という気持ちが、上谷に芽生えた。
「渡辺桃は私のデビュー戦の相手。元は同じQQ(クイーンズ・クエスト)のリーダーだったけれど、私たちを裏切って出ていった。そして、ワンダー・オブ・スターダムのベルトを13回防衛しているタイ記録保持者です。私がなぜ渡辺桃を挑戦者に選んだかというと、未来を作っていくためには歴史と闘う必要があると思ったんです。渡辺桃が作ってきた歴史があるからこそ、今ここにこの白いベルトがある。全て受け止めたうえで、これから自分がスターダムで新しい景色を見せていかないといけないなって。時代が変わる時がきたんです。新しい伝説を作りたい。渡辺桃という大きな壁をぶち壊すために、逆指名しました」
1月11日に行われた調印式の席上、「土下座するなら挑戦してやってもいい」と渡辺に土下座を要求された。上谷は拒否したが、力ずくで汚れたステージに土下座させられる屈辱を味わった。
「白いベルトに興味がないと言ったことを絶対に後悔させる」と上谷は誓っている。
上谷沙弥が駆け抜けた波乱万丈の防衛ロード
2021年12月、両国国技館で中野たむをド派手な空中回転殺法フェニックス・スプラッシュで破り、初戴冠を果たした上谷。それから1年1カ月で13回というハイペースで防衛を重ねてきた。
ウナギ・サヤカ、なつぽい、林下詩美、中野、舞華、MIRAI、スターライト・キッド、SAKI、ひめか、白川未奈、KAIRI、梅咲遥、壮麗亜美。KAIRIとは時間切れの引き分けだったが、他の12試合は勝利した。そのうち、8試合はフェニックス・スプラッシュを繰り出している。
順風満帆に思えた上谷の防衛ロードは、昨年後半から波乱万丈となった。最初のきっかけは、8月に決まっていたKAIRIとの防衛戦だ。KAIRIに「白いベルトが泣いている」と蔑まれた上谷は「そんなことはない」とリング上で示すはずだった。
その防衛戦が、KAIRIの体調不良で流れてしまった。だが、「白いベルトとともに成長していく」という上谷の気持ちはより一層強まった。