印象深かったのが、1次ラウンド第3戦のチェコ戦でのこと。5回終了時に8−2と6点差をつけていた試合展開で、城石コーチは“お役御免”で大谷を交代させようと考えていた。開幕投手を務めた中国との第1戦は投手と野手の二刀流で、韓国との第2戦は「3番DH」としていずれもフル出場していた。水原一平通訳を通じて疲労度を探ると、さすがの大谷も疲れているようだった。

来日してからすぐ合流、投打の出場で休みなく出ずっぱりだった大谷の疲労度を知った城石は…　©Naoya Sanuki

「監督に『翔平、替えていいですか？』という話をしたら、最初は『ダメ』って言われたんです。え？　とビックリしましたね（笑）。8回にリードが8点に広がったこともあって改めて『翔平、疲れているっぽいんですよね』と話をしてようやく『じゃあいいよ』と許可が出ましたけどね」

大谷が周囲に伝えた「塁に出てくる」

　日本代表の大黒柱として本気で世界一を目指す大谷の思いの強さには感嘆した。準々決勝のイタリア戦では3回1死一塁の場面で自ら、“大谷シフト”の裏を突くセーフティーバントを敢行した。準決勝のメキシコ戦では、1点を追う9回の先頭打者として打席に向かう際、周囲に「塁に出てくる」と口にしていた。普段よりバットを少し短く持って二塁打を放ち、逆転サヨナラへと繋がる絶好機を作った。

「見ていてバットを短く持っているな、と気づいていました。ひと振りで1点とれる選手なのに、チームが勝つために繋ごうとする姿でしたよね。セーフティーバントも同じです。技術だけではなく、ゲーム全体を見て勝負どころを見極め、流れを掴める力にも凄いものがあると思いました」

「現実的な話とは思えなかった」栗山の予言

　決勝戦でのリリーフ登板のプランを知ったのは試合当日だった。試合前の練習中に栗山監督自身の口からそれを聞いた時、城石コーチに驚きはなかったという。遡ること約1カ月。宮崎での強化合宿中の雑談のなかで、指揮官がふとこんな言葉を口にしていたからだ。

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