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侍ジャパンPRESSBACK NUMBER
WBC栗山英樹監督が“村上と心中”を決めた瞬間…城石憲之コーチが振り返る舞台裏「ごめん、代打はないから」「源ちゃんの送球を実際に捕ると…」
posted2023/04/17 11:02
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Getty Images
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で14年ぶりに世界一を奪還した侍ジャパン。内野守備・走塁兼作戦コーチとして栗山英樹監督の右腕となった城石憲之(ヤクルトの二軍チーフ兼守備走塁コーチ)が、激闘の舞台裏をNumberWebに語った。(全2回の#1/#2を読む)
アメリカを下し頂点に立った劇的な決勝戦から間もなく1カ月。歓喜の瞬間は、未だに城石コーチの瞼の裏側に焼き付いている。
「あれほどの経験はない。終わってみれば最高に楽しい素晴らしい1カ月でした。栗山監督があんなに喜んでいる顔を、野球少年みたいな顔を見られたことが、何より嬉しかったです」
栗山監督から言われた「また一緒にやりたいよね」
栗山監督とは日本ハム時代に、一軍監督とコーチとしてのべ4年間、苦楽を共にした。3年連続5位となりそろって日本ハムを退団した2021年11月、城石コーチは栗山監督の生活拠点である北海道夕張郡栗山町にある「栗の樹ファーム」に足を運んでいる。
「大自然の中で、とてもリラックスした表情をされていました。10年間ファイターズの監督として大変な思いもされて、ようやく重荷を降ろしたような……」
「栗の樹ファーム」には、全面天然芝の野球場がある。そのレフト後方にある小高い丘に、栗山監督と城石コーチはその日、一株の苗木を植樹した。木製バットの素材となるアオダモの苗だ。風に吹かれ、ゆったりと流れる時間の中で野球談義を交わした後、ふと栗山監督がこんな言葉を口にした。
「もしもう一回ユニフォームを着て勝負する機会があったら、また一緒にやりたいよね」
「打ってくれ、頼む!」ではなく「この選手は必ず打つ」
遠い将来の話……城石コーチはそう捉えていたが、実はこの時、栗山監督は心に日の丸を背負う決意を秘めていた。その年の12月に日本代表監督の就任を発表。ヤクルトに復帰した城石コーチには、WBC本番を3カ月後に控えた2022年12月にコーチの要請が届いた。