「京都でビジネスミーティングの予定を組んでいて、それに娘を連れて東京観光をする予定を抱き合わせた。野球の試合がなかったとしても、行く予定だった」

　メッツのコネがあったため、イタリアが準々決勝進出なら東京ドームに入場が可能。それが大谷先発の試合と重なったのは、たまたまだったという。世界最高の選手の大舞台での戦いぶりを見たいという気持ちがあったのかどうかには言及しなかったが、それでも来日を決めた時点で準々決勝の試合が念頭にあったのは確かだ。

メジャー開幕戦で…ファン総立ちが示すもの

　4月7日、メッツの本拠地開幕戦の試合前セレモニー。選手紹介の最後に場内アナウンスが流れた。

「ファンのみなさん、まだ紹介していない選手が1人残っています」

　アナウンスを合図に球場に響き渡ったのは、ティミー・トランペットの「Narco（ナルコ）」だった。ディアスが登場時に使用したことで有名となった曲で、空に高々と響くトランペットの音が守護神の登場にハマり、昨季大きなブームになった。最近は広島カープの栗林良吏投手が登場曲に使用するなど日本の球場でも流れるようにはなったが、間違いなくディアスのトレードマークといえる曲だ。

　トランペットの音が響き渡ると、客席を埋め尽くすファンが総立ちになり拍手をし始めた。その曲の出だしを聞いただけで誰が登場するのか、その場の全員がわかっていた。

　騒動後はじめて、ディアスが公の場に姿を現したのだ。

メッツの開幕戦。球場に姿を見せたディアス ©Getty Images

　松葉杖を持ったディアスはダグアウトの階段を上がってフィールドに出ると、笑顔でファンに向かって手を振った。右膝をケガしてからSNSでリハビリの様子を発信し続けていたディアスは、常に笑顔を見せてきた。WBC出場の後悔など微塵も見せず、ひたすらリハビリに励み続けてきた。

　その姿を知っていたからだろう。ファンは総立ちのまま笑顔で大きな拍手を送り続けた。WBC不要論を唱える者は、もう誰もいなくなっていた。

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