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「WBCは意味のないお遊び」批判も…アメリカで“不要論”はなぜ消えた? 大富豪オーナー・大物選手らのWBC論「プエルトリコで殺人が減った」
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byGetty Images
posted2023/04/13 11:00
WBCでプエルトリコ代表として戦ったメッツの抑え右腕、エドウィン・ディアス。大会中の大ケガで「WBC不要論」が沸き起こったが…
ドミニカ共和国代表のGM兼選手だったネルソン・クルーズ外野手(パドレス)は大会中に「WBCは本物のワールドシリーズ。ドミニカ共和国の人々にとってこの大会は重要だし、だから僕らも国を代表する重みを感じてプレーしている」と語り、ベネズエラ代表のオマー・ロペス監督(アストロズコーチ)は「この大会を継続し、我々の人生の一部にするべき。リスクはもちろん負う。選手が国を代表して戦うことを望んでいるのだから、出場するすべての国を我々みんながサポートしていかなければならない」と熱弁を振るった。
「殺人事件が起きなかった」プエルトリコとWBC
思わぬ惨事の当事者となったプエルトリコ代表にも、WBCを否定する選手は誰一人いなかった。名捕手として昨季で19年の現役生活を終えプエルトリコ代表監督に就任したヤディエル・モリーナは「チームが戦っていたこの4~5日間、プエルトリコでは殺人事件が起きなかった。国民みんなが僕らの戦いぶりに満足してくれていたということ。僕らのため、そしてシュガー(ディアス)のために祈ってくれて感謝します」と語っている。犯罪や貧困、政情不安が当たり前の中南米では、WBCとのかかわりはより切実だ。プエルトリコ国内ではドミニカ共和国との試合が61%の視聴率を記録したほど、社会的影響力を持っていた。
こうした騒動のなか、特に注目を集めた人物がメッツのオーナー、スティーブ・コーエン氏である。
球団オーナーは日本にいた…「オオタニの視察?」
MLBでも突出した資産家である同オーナーは昨オフ、多額の資金を次々と投じチームを一流選手で固めた。その1人がディアスで、リリーフ投手としては史上最高額となる5年総額1億200万ドルで契約延長をしたばかりだ。
自チームの選手が大会中にケガでもしたら大変だとWBCに出場させたがらない球団オーナーは過去に何人もいた。実際、選手に不参加を要請する球団もあったというのは、米球界では知られた話だ。高額で契約を延長したばかりのスター選手がシーズンを棒に振るようなケガをしたと知ったオーナーはどんな反応をみせるのか、みんなが興味津々だった。