入学が決まると実家がある浜松を出て、野球部員が生活を送る「下宿」に入った。

　8校から勧誘された梅林は「（野球にも）それなりの自信を持っていた」。だが1学年十数人と少数精鋭の名門野球部は、腕に覚えがある選手ばかり。入部早々にレベルの高さにあ然とさせられる。

「2年先輩には鈴木将平さん（埼玉西武）がいましたが、ショックを受けたのは、村松開人（明大-中日）ら同期との差です。同級生ともこんなに違うのかと」

昨秋ドラフトで中日に2位指名された村松開人内野手。梅林とは静岡高時代の同級生にあたる　©︎JIJI PRESS

　中学時代とは生活も一変した。平日は夜8時くらいまで練習があり、その後は2時間の自主練習。寝る時間はいつも遅かったが、1年生は早朝からグラウンド整備をしなければならなかった。心身ともに休まる間がなく、授業中に居眠りしてしまうことも。集中力を発揮するのが当たり前だった梅林にとってあり得ないことだった。

　成績も急降下した。入試では4番だったが、1学期は320人中300番に近い順位に。野球だけでなく、勉強でもダメなのか……両方できるのが自分のステータスだった梅林は自分の存在価値を見失っていく。

「貫くはずだった文武両道が貫けない。特に学業成績は受け入れ難く、何のために静高に入ったのかと……しばらくはくすぶってましたね」

　梅林にとって、人生で初めて味わう挫折だった。

「東大を目指してみないか？」

　転機が訪れたのは1年秋だ。苦悩している様子を見ていた栗林監督からこう言葉をかけられた。

『東大を目指してみないか？』

「東大というワードもさることながら、栗林監督が気にかけてくれていたのが励みになりました。初心に戻って野球でも一番を目指してみろとも言われました」

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