- #1
- #2
大学野球PRESSBACK NUMBER
「東大を目指してみないか?」偏差値70超の名門野球部で挫折しかけた高校生を救った恩師の提案…“甲子園も経験”東大キャプテンのスゴい経歴
posted2023/04/11 17:00
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph by
Shinichi Uehara
全てが順風満帆という人はいないだろう。「東大入学」と「甲子園出場」という2つの難関を突破した男にも、挫折感を味わった日々があった。
東大野球部の中心打者で、今季から主将になった梅林浩大(4年)は子供の頃から優等生だった。両親とも小学校の教諭。ただ「勉強しなさい」と言われたことはなく、母・朱美さんが口にしていたのは「勉強だけでなく、スポーツとか、いろいろなことが幅広くできたらカッコいいね」だったという。ご多分に漏れず、ゲーム遊びもしていたが、授業中はいつも集中していた。
中学でも学年上位の成績を維持しながら、野球にも打ち込んだ。学校の野球部は強く、3年時には静岡県大会で16強に。梅林は一塁手兼左のエースで、打っては中軸を担った。その実力は知られることになり、県内の8校から声がかかった。
一方で、梅林は時おり学校の図書室に足を運んだ。読書にふける時間も好きな少年だった。そんなある日、運命的な本と出合う。
「中学1年の時です。図書室に置いてある科学雑誌の特集が『宇宙には外があるのか』だったんです。テーマにひかれて読んでいくうちに、宇宙についてもっと知りたいと思いまして。それからは宇宙に関する本をよく読むようになりました」
梅林と宇宙との関わりついては後ほど触れるとしよう。
「勉強もできるところで甲子園を目指す」
さて、8校から誘われた梅林だったが、行きたい高校があった。昨年まで春・夏通算で43回の甲子園出場を誇る名門・静岡高だ。地元では「静高」と呼ばれる静岡高は、1896年創部の歴史ある野球部があるだけでなく、偏差値71を誇る県内一の公立進学校だ。
「勉強もしっかりできるところで甲子園を目指したいと思ったんです」
静岡高には「学校裁量枠」(推薦制度)があり、例年10人前後の有望選手が野球部に入部する。梅林も中学時代に通っていた野球教室(ケイスポーツベースボールアカデミー)の中村好志氏を通じて出会った栗林俊輔監督(当時)から実力を買われていた。だが、すでに「枠」が埋まっていたことから、一般入試で静岡高を受験し、狭き門を突破した。静岡高に進路を定めてからは、勉強のギアを上げ、学年1位を譲らなかったという。