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「1年延期は競技的にプラスだったのかも」寺村美穂28歳が回想…“98%あきらめた”東京五輪での引退「自分、お疲れさま!って」 

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/04/09 11:04

「1年延期は競技的にプラスだったのかも」寺村美穂28歳が回想…“98%あきらめた”東京五輪での引退「自分、お疲れさま!って」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

寺村美穂さんは東京五輪の現役ラストレースを終えた後、万感の表情だった

「リオの時とは違って……“震え”は来なかったですね(笑)。冗談はさておき、がむしゃらだったリオの選考会とは対照的だったんです。4年前の経験もありましたし、どういった泳ぎをすればいいのか……というプランをしっかりと臨んだ結果、優勝を飾ることができました(※2分09秒55で、2分09秒67の大橋悠依に勝利した)。この結果に至るまで、本当にすべてが味方してくれたのかなという感じがします。1年延期になったというよりも、水泳人生の最後をしっかりとやりきるために、1年間をもらえたんだな、今でもそのように考えていますね。もし1年間の延期がなかったら、2020年の状態を踏まえると98%くらい、わたしのオリンピックはリオだけで終わっていたと思います」

――そして迎えた東京五輪、スタート台に立った瞬間はどのような気分でしたか?

「このオリンピックで本当に私の水泳人生は終わりなんだな。でもここに立って終われるのは最高の目標だったけど――その最高で終われる保証がない中で実現できた――そんな風に考えていました」

すっきりしたのち、ドバッと涙が出た

――寺村さんにとって現役最後のレースとなったのは200メートル個人メドレー準決勝。1組7着で現役生活にピリオドを打ちました。その時の心境は?

「すっきり! その一言ですね。それまでは選考会でいい泳ぎができなかったことなど、つらい思い出がよぎることもあったのですが“この大会が最後なんだ、全てを出し切ろう”と、フラットな気持ちで挑めていた気がします。ただ、その後のインタビューで『この5年間、色々とあったと思うんですけど……』と質問されると、ドバっと涙が出たんです(笑)。『ちょっと待ってください』とインタビュアーさんに言って少し時間をもらったんですが……心の奥底では“自分、苦しかったんだな”と気づかされたし、心の中で“自分、お疲れさま!”って、ようやく自分をほめることができた瞬間でしたね」

――今後についても聞かせてください。アスリートならだれもが直面するセカンドキャリアですが……トッププレーヤーだと30~40代までプレーを続けられる野球やサッカーとは違い、寺村さんは現在28歳です。今後についての展望はどう考えているんでしょうか。

「1人でも多くの人に水泳の楽しさを伝えたり、普及に全力を尽くしたいと思います。はい。私はヒザのケガがありましたが(笑)、水泳は一番健康にいい、と言われているスポーツです。全身運動であることは間違いないですし、これは子供に限らず大人に向けても生涯の健康を保つためにはとてもいいものですからね。そういった正しい泳ぎ方というのを今後伝えていければなと考えています」

【次ページ】 プールが減っていくということに悲しさが

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