アスリートはケガや成績不振により、本人の意思に反して引退せざるを得ないケースも多い。金井が絶頂期に惜しまれつつも自らキャリアに区切りをつけられたという事実は、彼がトップ選手であった証ともいえるのではないか。

陸上選手の「引退後」をどう思う？

　アスリートの中には、引退後の生活と競技生活のギャップに悩む例も少なくはない。金井自身も同世代や後輩を見ていて、思うところがあるのだという。

「どうしても陸上、特に短距離やハードルは競技を続けられる環境が少ないんですよ。だからこそ『とにかく陸上に時間を割きたい』という気持ちだけで競技を続ける選手も多いと思うんです。個人種目という特性もあって、自分のみに集中してしまうというか、周りを見渡しにくい部分もあるのかもしれないですね。その気持ちは僕もよくわかるんです。でも人生100年時代といわれる中で、競技にかける時間って20年くらい。残りの80年が断然重要になりますよね。競技を続けながらそれを意識したら、自分の行動も変わるのかなと思います」

　金井は歯科大を卒業後、国家試験合格を経て臨床の現場へと出ていく。ゆくゆくは歯科医院では白衣を着て診察を行い、トラックで陸上の指導を行う姿を見られるかもしれない。日本の110mハードルの礎を作った名選手の人生は、まだまだこれから続いていく。

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26歳で引退、“ハードル日本王者”はなぜ絶頂期に歯科医師の道を選んだのか「次があると思っていたら、あんなに記録は伸びていない」

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