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WBC栗山英樹監督の顔色が変わった“3人の選手”…帰国会見、TVに映らなかった“控え組”への気配り「スタメン出場はなかったんですけど…」
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/03/29 11:03
NPB所属の26人の選手が次々とコメントする中で、栗山監督が思わず顔を向けた選手が3人いた。その3人への視線にはどのような意味が…?
牧原は外野手・鈴木誠也がケガによる出場辞退となり、3月1日に急遽追加招集された選手だ。実は、招集がかかってから本人は一晩悩んだ末に参加を決断。栗山監督は「絶対的な切り札になる」と期待を寄せたが、外野の近藤健介、ヌートバー、吉田正尚がそろって活躍。大会中は6試合に出場したが、すべて途中からの出場で打席に立ったのは計2打席のみ。準決勝のメキシコ戦では村上宗隆の代打としてベンチでも準備をしていた牧原だったが、結局出番に恵まれなかった。
最後の優勝する瞬間に守備について優勝を迎えられた
昨季は規定打席に2打席足りず、今季は“スーパーサブ”ではなくセンターのスタメンを狙う覚悟を決めていた。初の規定打席到達も目標とする育成出身の苦労人にとって、3週間の離脱がチーム内でのポジション争いに与える影響は小さくなかったはずだ。
だが、牧原は会見で先ほどの言葉に続けて前を見据えながらコメントをこう結んだ。
「最後の優勝する瞬間に守備について優勝を迎えられたことは、すごい僕の中でいい経験になりました」
中央に座した代表監督は視線をもとに戻し、噛みしめるように頷いていた。
優勝セレモニー後、牧原に対して栗山監督は脱帽
牧原は決勝戦の9回表から吉田正尚に代わってセンターの守備についた。さかのぼると7回裏に吉田が併殺打に倒れているため、8回表から守備固めとして交代出場してもおかしくなかったはずだ。実際、1次ラウンドのオーストラリア戦では8回表に凡退した近藤健介に代わって直後の8回裏から牧原がライトに入っている。決勝戦の、あと3アウトという場面で牧原を投入したのは単なる“守備固め”以上のメッセージが込められていた――と考えるのは「栗山野球」という“ドラマ”の見過ぎだろうか。
優勝セレモニー後、優勝の笑顔が咲く選手たちの中で、栗山監督は牧原の元へ歩みを進め、帽子を取って真剣な表情で何かを伝えていた。会見後の夜、過去キャスターを務めた“古巣”のテレビ朝日系『報道ステーション』に生出演し、この場面についてこう説明している。