侍ジャパンPRESSBACK NUMBER
WBC決勝先発、今永昇太を北九州の高校恩師はどう見た? 「“緊張しない”彼が…」「可能性がゼロではないことを証明してくれた」
text by
内田勝治Katsuharu Uchida
photograph byGetty Images
posted2023/03/28 11:00
WBCアメリカとの決勝戦、2回を投げて1失点だった今永。これまでにない大舞台での彼の投球を見た恩師は…
その教え子の、これまでとは違う表情や仕草をテレビ越しから敏感に感じ取り、一抹の不安を覚えたが、先頭の1番ベッツに投じた初球、151キロの直球でストライクを取った時に「安心した」と言う。そして2球目、148キロ直球で詰まらせ、ライトフライ。1つ目のアウトを奪い、平静を取り戻すことができた。
ただ、相手はアメリカ打線。いかに本調子であろうと、打ち取るのは至難の業だ。続く2番トラウトは119キロカーブでフライに打ち取ったかに思えたが、不運にもライト前にポトリ。ヘッドスライディングで二塁を陥れたところに、メジャーリーグで過去3度MVPを獲得した代表主将の本気度が垣間見えた。割れんばかりの「U・S・A!」コールが初回から鳴り響く。
狙い通りのノーヒットノーラン
今永は完全試合、もしくはノーヒットノーランを狙って先発マウンドに上がるという。田中さんは「いつかノーヒットノーランするんじゃないか、って思うことはありました。彼にはそういうことを感じさせるものがあるんですよね」と言う。
実際、昨シーズンの6月7日、日本ハム戦でプロ入り初のノーヒットノーランを達成。「投げる哲学者」と呼ばれるDeNAのエースは、1回から9回まで緻密なペース配分で117球を投げ抜いた。
WBCでも先発マウンドに上がれば、その信念が変わることはない。しかし、準決勝以降は95球以内という球数制限がある上に、後ろにはダルビッシュ有や大谷翔平ら、侍ジャパンが誇る最強投手陣も控えている。自分の役割は、いかに少ない失点で、リリーフ陣に後を託せるか。ペース配分を考える必要はなく、ただ全力で腕を振ることに集中した。
「大反省」と語った悔いの残る1球
いきなり迎えた1死二塁のピンチも動じることはなかった。昨季ナショナル・リーグMVPの3番ゴールドシュミットを135キロチェンジアップで3球三振。4番アレナドもファーストゴロに仕留め、初回を無失点に抑えた。
2回、先頭の5番シュワバーをライトフライに打ち取り、順調に立ち上がったかのように見えた。が、好事魔多し。続く6番のターナーはここまで大会4本塁打を放ち、打順も9番から昇格。最も警戒しなければならない打者だった。