猛牛のささやきBACK NUMBER
「正尚さんがMVP」「正尚がやりよった」オリックスの仲間たちが誇る吉田正尚の大活躍…先輩ラオウは「めっちゃおもろい」その理由は?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/24 11:17
WBCではMVP級の働きを見せた吉田正尚。古巣オリックスの仲間たちも活躍を喜んでいた
1次ラウンドの韓国戦では、2-3とリードされていた3回裏1死満塁の場面で逆転の2点適時打。チェコ戦でも、0-1とビハインドの3回裏2死一、二塁の場面で逆転の2点適時二塁打を放つなど、逆境の場面に強かった。
そしてなんと言っても、準決勝・メキシコ戦での一振りだ。試合は4回表に先発の佐々木朗希(ロッテ)が3点本塁打を浴び、0-3のまま試合が進む苦しい展開。日本は再三得点チャンスを作るが、相手の好守備に阻まれてランナーを返せず、重い空気が立ち込めていた。
だが7回裏、近藤健介(ソフトバンク)のヒット、大谷の四球で作った2死一、二塁の場面で、打席に入った4番・吉田は、足元に沈むように向かってきたチェンジアップをすくい上げた。日本中が息をのんで見守った打球は、ライトポールの内側に消えた。まさに起死回生の同点スリーラン。ダイヤモンドを回りながら力強く拳を握りしめた吉田は、先にホームインして出迎えた大谷に力一杯抱きついた。
この3点本塁打で吉田は今大会13打点目。これまでの記録だった12打点を抜き、大会最多打点を更新した。
青学グループLINEには200件の祝コメント
昨年まで同僚だったオリックスの選手たちは、練習中だったためリアルタイムではこの劇的な場面を見られなかったそうだが、練習後に映像をチェック。「すごい」「さすが」と声を揃えた。
宗佑磨は、「さすがっす。でも正尚さんにしては珍しく、打った後ちょっと感情的になっていましたね。わーやっぱ日の丸を背負うとそうなるんだな、と思って」と素直な感想を語った。
青山学院大とオリックスで吉田とクリーンアップを組んだ、2年先輩の“ラオウ”こと杉本裕太郎は、その日のオープン戦で本塁打を放った。後輩との日付変更線を越えた遠距離アベック弾に、「正尚が午前中に暴れていたのでいい刺激になりました。明日も頑張ってください」とコメントした。
杉本がその日午前中の練習を終えてスマートフォンを確認すると、青学大野球部の仲のいいメンバーで作るグループLINEのコメントが約200件も溜まっていたという。
「見てみたら、『正尚がやりよった』という内容で、すごい盛り上がっていました。そのあと映像を見ましたけど、やっぱすごいなと思いましたね。難しい球だったんですけど……あれをホームランにできるのはあいつしかいないんじゃないかなと思いました」