また先のクラシコでは、バルサが0-1でアウェイの地で勝利を飾っているが、守備に重きを置いた戦いには、勝利にも関わらず疑問の声も上がっていた。ホームでのこの一戦、チャビがどのような戦術を取るかにも注目は集まっていた。

　通常サッカーの撮影では、前後半でポジションを変更することができる。ただW杯決勝、CL決勝など多くのカメラマンの集まる一部の試合では、ポジションを変更する余地がない。この試合もそんな試合の1つだった。90分の撮影をする場所を事前に決定しなければならず、大きな賭けとなる。

　一度メインスタンド側のポジションを確保。ゴール後のセレブレーションが行われる可能性が高く人気のポジションだ。だが、やはりアラウホ対ビニシウスの激突をより間近で撮影できる、逆サイドのコーナーフラッグ付近にポジションを取り直した。

バルサの新星18歳ガビのプレス、カンプノウに響く罵声

　最初にピッチに登場したのは、バルサGKテアシュテーゲン。大きな歓声が上がる。軽くランニングした守護神は、まず細かいタッチでドリブルをするような足でボールを扱う動作を繰り返していた。続いてマドリーGKクルトワ、そしてマドリーイレブンが姿を現すと、ブーイングがスタジアムを包む。そしてバルサのメンバーが登場すると、携帯を片手にしたファンの歓声が再度スタジアムを包む。徐々に徐々に、スタジアムの空気がキックオフに向かって収束していく。

　VIP関係者席には、元バルサ監督で現マンチェスター・シティ監督のペップ・グアルディオラが姿を現した。バルサのイムノが流されると選手入場の合図だ。ブスケッツとベンゼマをそれぞれの先頭に両イレブンが姿を現す。人種差別反対キャンペーンの一環として、両チーム混ざっての集合写真が撮られた。

　試合開始の笛が鳴る。満遍なく水が撒かれたピッチ上を水飛沫を上げてボールが走る。開始から3分、デヨングのパスを受けたレバンドフスキが反転から強烈なミドルシュートを放つと、クルトワは横っ飛びで弾き出した。目の前のCKでラフィーニャが鋭いボールを蹴り込むと、鈍い音が聞こえてきた。

　さらに6分、DFラインの裏に抜け出したラフィーニャが、ブスケッツからのパスを頭で合わせたが、これも弾き飛ばされた。マドリーが守備ラインからボールを運び出そうとしたところには、18歳のガビが激しいプレスを仕掛ける。ホームチーム優位でゲームは進むかに思われたが――9分、バルサ陣内深くへ切り込んだビニシウスの折り返しは、アラウホの頭を直撃すると、テアシュテーゲンの脇をすり抜けゴールの中に吸い込まれていった。マドリーの喜び、そして響き渡る罵声の対比が印象的だ。

【次ページ】　クラシコらしい激しい攻防と、リスペクトあるシーン