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どうしたホンダ? MotoGP開幕直前テストでも不振の理由と復活への道筋《昨年はコンストラクターズ最下位》
posted2023/03/17 11:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
グランプリの最高峰MotoGPクラスは、2月のマレーシア・セパンに続き開幕戦の舞台となるポルトガル・アルガルベのテストを終え、いよいよ開幕を待つばかりになった。
テストの結果は、昨シーズン好調だったドゥカティとアプリリアがさらにパワーアップ。特にドゥカティは、4チーム8台中7台がトップ10入りと圧倒的な強さを見せている。ドゥカティに続くアプリリアは決勝を想定したロングランが中心で、10番手前後に2チーム4台が集中しているが、数字よりかなり良い内容で終えていることを感じさせた。
そして、今季1チーム2台体制になったヤマハは、エースのファビオ・クアルタラロがマレーシアで苦戦するも、ポルトガルでセットアップをまとめて上位に進出。2年ぶりのタイトル奪還に向けて、なんとか勝負できるところまでパフォーマンスを上げてきた。対して、KTMが昨年に比べて低迷し、ホンダは今年も苦戦のスタートという図式だった。
ここまでの戦況をまとめれば、「イタリアメーカーの2強と孤軍奮闘ヤマハのファビオ・クアルタラロの戦い」となる。気になるのは、ホンダはどうして今年も低調なのか、ということだ。
各メーカーは開幕戦ポルトガルGPで、エンジン、エアロパーツ(シーズン中のアップデートが1回認められる)などの認定を取らねばならない。シーズンが始まってしまえば、できるのは車体の変更だけである。シーズン中はテスト日数も限られているので、いま走らないバイクは開幕後も苦戦する可能性が高い。
不振続きの根本的原因
ホンダのテストを見て、明らかに失敗しているなと思ったのは車体だ。
「ホンダはどうして最高速が遅い?」とパドックでも話題になっているが、ホンダのエンジンが遅いということは考えにくい。原因はトラクション不足による加速時のリアタイヤのスピニングがひどく、加速でロスしてパワーが最高速につながっていないためではないだろうか。そのスピニングを電子制御で抑えると、本来のエンジンパフォーマンスを発揮できず、結果的にスピードは変わらないという状況が続いている。
加えて、近年のMotoGPクラスでパフォーマンスの鍵を握る空力においてもホンダは試行錯誤を続けており、それもまたエンジンパワーを活かせない理由につながっている。
そのひとつの失敗例が、2023年型RC213Vに投入されたアッパーカウルである。テスト当初、「こんなに小さくしたら、風があたってライダーは疲れるだろう」と思っていたら、ポルトガルではライダーたちのリクエストで、幅を広げるアタッチメントをつけて緊急的に対処していた。